エンジンはポルシェ356のフラット4 VWタイプ1がベースのスポーツカブリオレ 前編

公開 : 2022.08.07 07:05

オリジナルモデルの創造を志した2人による、スポーツカブリオレ。ビートル・ベースの希少なクラシックをご紹介します。

VWタイプ1をベースにしたスポーツカー

どんな時代でも、クルマ好きは手頃なスポーツカーを求める。第二次大戦で荒廃したドイツやオーストリアでさえ、フォルクスワーゲン・タイプ1をベースにしたロードスターやクーペが、戦後間もない頃から多くのコーチビルダーによって生み出されていた。

フェルディナント・ポルシェ氏は、ドイツ・シュツットガルトのリッター社にポルシェ356のボディ製作を依頼。独自のシャシーを設計し、約2年を投じて初期の50台の生産にこぎ着けた。

ダネンハウアー&シュタウス・スポーツカブリオレ(1951年/欧州仕様)
ダネンハウアー&シュタウス・スポーツカブリオレ(1951年/欧州仕様)

そのドイツには、同様に独自のスポーツモデルを構築しようと考えたコーチビルダーが存在した。ダネンハウアー&シュタウス(D&S)社だ。356より、ずっと控えめな内容ではあったけれど。

D&S社は、タイプ1の原型となるKdFワーゲンのプロトタイプ用ボディ製作へ、リッター社とともに関わった経験を持っていた。それ以外の同業者より、フォルクスワーゲンの構造には詳しかったといえる。

1949年5月に新しいドイツ連邦が成立すると、D&Sも通常営業に復帰。大量生産されコンポーネントを転用しやすい、フォルクスワーゲンをベースにしたスポーツカーの需要へ応えることで、事業拡大を狙った。

腕利きの板金工であり、自動車のメカニックとしても経験を積んでいた義理の息子、カート・シュタウス氏も新事業に参加。創業者のゴットヒルフ・ダネンハウアー氏とともに、シュツットガルトにワークショップを構えることになった。

ポルシェ356に似たフロントデザイン

メカニズムに関しては詳しかったが、カーデザインには充分な経験がないと理解していた2人は、エンジニアのヴニバルト・カム氏のもとで学ぶ学生へスタイリングを依頼。滑らかなロードスターが描き出された。

ゴットヒルフとカートがデザインに細かな手を加え、スポーツカブリオレの原型が誕生した。エンジンとフロントシートの間に、カバーで覆える荷室が設けられていたのが特徴といえる。

1950年のクリスマスがやってくる頃には、最初の1台が完成。フロントシートの後ろには、2+2として使える簡易的なベンチシート付きの荷室が与えられていた。

今回ご登場いただいたダネンハウアー&シュタウス・スポーツカブリオレは、1951年後半の製造。設計やデザインはオリジナルのままで、左右に分割されたスプリット・フロントウインドウが初期型の目印となる。

D&Sの方がよりボディに厚みがあるものの、フロント周りの造形はポルシェ356に似ている。タイプ1を祖先とするクルマとして、避けられない近似性なのかもしれない。

シャシーは、フォルクスワーゲンのスケートボードと呼ばれた構造を踏襲している。ポルシェのように、独自設計は取られていない。

ボディ側面へ回ってみると、余計な膨らみのないフラットな面構成に気づく。空気力学に長けていた、ヴニバルトの影響は明らかだろう。丸みを帯びたフォルムは、テールに向けてなだらかに傾いている。ホイールアーチも小さい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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