唯一のマラネロ・コンバージョン フェラーリ・テスタロッサ・スパイダー フィアット会長の愛車 前編

公開 : 2022.08.20 07:05  更新 : 2022.08.22 15:49

ユーザーフレンドリーなテスタロッサ

そもそもテスタロッサという名前は、1950年代の伝説的レーシングカーから引用されている。モデルラインとしては、512ベルリネッタ・ボクサー(BB)の進化系といえたが、スタイリングは刷新。ピニンファリーナ社によってデザイン、製造された。

テスタロッサで目指されたのは、旧式化した水平対向12気筒エンジンのドライブトレインを、最新の仕様へ改めること。排出ガス規制や安全性が考慮された。

フェラーリ・テスタロッサ・スパイダー(1986年/欧州仕様)
フェラーリ・テスタロッサ・スパイダー(1986年/欧州仕様)

1980年代初頭まで、水平対向12気筒エンジンはフェラーリのF1マシンと結びついていた。だがターボチャージャー・ユニットの登場と、グランドエフェクトを利用した空気力学の進化で、テスタロッサの時代には関係性を失っていた。

多くの点でそれ以前のフェラーリの特長と、異なる方向性も与えられている。テスタロッサの車内は快適でユーザーフレンドリー。比較すればだが、実用性が高められていた。

シャシー中央にラジエーターが移された理由は、車内の温度を低く保つため。ボディサイドのエアベントには5枚のフィンが与えられ、テスタロッサの象徴にもなっている。フロントノーズの荷室空間も、広く確保できた。

5.0Lエンジンはブロックが512 BBiと共有だが、多くの改良が施されている。シリンダーヘッドは4バルブ化され、点火系も一新。最高出力は欧州仕様で390ps、日本仕様では380psを発揮した。

512 BBiと比較するとホイールベースは長く、ボディもひと回り大きい。その結果、前後の重量配分が改善されている。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームズ・ページ

    James Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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