唯一のマラネロ・コンバージョン フェラーリ・テスタロッサ・スパイダー フィアット会長の愛車 後編

公開 : 2022.08.20 07:06  更新 : 2022.08.22 15:49

テスタロッサで唯一、正規にフェラーリによるコンバージョンを受けたスパイダーを、英国編集部がご紹介します。

内装やメカニズムはベルリネッタと同じ

フェラーリテスタロッサで圧倒されるのが、1980mmある全幅。スパイダーはルーフがなく低く見えるため、一層ワイドだ。ところが実際は、メルセデスAMG GT クーペと大きくは違わない。ステアリングホイールを握っても、扱いにくさはない。

試乗したのはフランス・パリの郊外で、見慣れた景色が広がる。アルプス山脈の峠道を駆け登ったり、南部の海岸線をマレッラ婦人と一緒に流した、ジャンニ・アニェッリ氏の体験を想像することは難しい。

フェラーリ・テスタロッサ・スパイダー(1986年/欧州仕様)
フェラーリ・テスタロッサ・スパイダー(1986年/欧州仕様)

インテリアは、ベルリネッタのテスタロッサとほぼ同じ。ダッシュボードは直線基調で、センターコンソールにはオレンジの目盛りが振られた水温計と燃料計が並ぶ。

手前側には、沢山のスイッチが整列している。どんな機能なのか表示が曖昧で、最後まで何用かわからずじまいのものもあった。

メカニズムも基本的には変わらずで、3枚のペダルが中央側にオフセットしている。低速域では、アシストのないクラッチとステアリングホイールが重い。それ以外、驚くほど運転しやすいことも共通している。

5速MTは、伝統的なオープンゲートのドックレック・パターン。1速が左下にある。それに慣れてしまえば、5.0Lの水平対向12気筒が生み出す豊かなトルクに乗れる。変速もサボり気味でいい。

今日の路面は湿っていて、リアのミシュランTRXタイヤは簡単に空転する。優しくアクセルペダルを倒しても。静止からの加速は、期待ほど鋭くない。

テスタロッサが得意としたのは、長距離を一気にこなすグランドツアラー的な走り方。どこまでも、高速で走り続けられそうな気になる。

スタイリングやソフトトップの見事な処理

自然吸気のフラット12は、4000rpm以下でもタービンのように滑らかに回転。フランスの一般道では賢明といえない速度域まで、簡単に到達してしまう。エンジンとエグゾーストのサウンドは控えめ。トンネルで吹かしてみても、意外なほど静かだった。

速度域に関わらず、テスタロッサ・スパイダーは安定している。160km/hを超えても、不安感は一切ない。アニェッリも、気ままに高速道路を飛ばせたことだろう。

フェラーリ・テスタロッサ・スパイダー(1986年/欧州仕様)
フェラーリ・テスタロッサ・スパイダー(1986年/欧州仕様)

乗り心地はしなやかで、ボディはソリッド。ルーフがなくなることへの強化対策を、フェラーリは入念に施したに違いない。

スタイリングも、ダイナミックなサイドデッキがエンジンカバーに融合する処理や、白いソフトトップの収まりまで、見事に整えられている。フロントガラスの上部には、クリップでウインドディフレクターを取り付けられる。

ちなみにアニェッリは、電気機械式のアクチュエーターでクラッチを操作する、ヴァレオ社製のセミ・オートマティックに換装したF40を所有していた。1952年の自動車事故で、左足が義足だったためだ。

これは、ランチアのラリーカー用に開発されたもの。数年後に、2+2のフェラーリ・モンディアルでも採用されている。左足を動かすことなく、シフトレバーを傾けるだけでクラッチが自動的に切れ、繋がる。

テスタロッサ・スパイダーのセンターコンソールにあれこれ触っていたら、偶然にもクラッチペダルが奥まって固定されるボタンを発見した。このフェラーリも、F40と同じシステムが組まれているようだ。

記事に関わった人々

  • ジェームズ・ページ

    James Page

    英国編集部ライター
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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