「以心伝心」で痛快至極 フェラーリ296 スペチアーレ(2) 精錬されたロードカーの魅力

公開 : 2025.10.28 19:10

488 ピスタの後継、296 スペチアーレ 1t当たり550psのパワーウエイトレシオ 249km/hで435kgのダウンフォース 興奮の内蔵へ響く加速 望外に魅力的な公道での走り UK編集部が試乗

電気だけで発進可能 内蔵へ響く興奮の加速

フェラーリ296 スペチアーレの試乗体験は、駆動用モーターから始まる。ハイブリッド・モードのままなら、電気だけで発進するからだ。充分活発で、遠吠えなしに自宅のガレージから出発できることを、喜ぶオーナーは多いはず。

のっけからドラマチックなスタートがご希望の場合は、e-マネッティーノをパフォーマンス・モードに変えて、スタートボタンを押せばOK。チタン製マフラーから、耳をつんざくような咆哮が放たれる。破裂音混じりで。

フェラーリ296 スペチアーレ(欧州仕様)
フェラーリ296 スペチアーレ(欧州仕様)

296 スペチアーレのハイブリッド・システムは、自己主張をプラス。駆動用モーターは、シリアスなマネッティーノ・モードでの変速時に、容赦なくトルクを展開する。少し誇張気味だが、内蔵へ響く加速で興奮を覚えることも否定しない。

さらにサーキットでは、走るほどにシステムがコースを学習。クオリファイ・モード時には、180psのすべてを駆動用モーターが放出する。ただし数周程度では、明確な違いを感じ取ることは難しいかもしれない。

見事に調和したアクセルペダルとリアタイヤ

フィオラノ・サーキットで試乗した296 スペチアーレは、マルチマティック・ダンパーとチタン製スプリングを備えていた。カーボンファイバー製ホイールは、2万1000ポンド(約429万円)するそうだ。

レース・モードで最初の数周をこなしたが、「サイドスリップ・コントロール9.0」と呼ばれる、トラクション・コントロールの介入は強力。かなりガクガクとパワーが絞られる。慣れたところで、TCオフを選ぶ。

フェラーリ296 スペチアーレ(欧州仕様)
フェラーリ296 スペチアーレ(欧州仕様)

ステアリングは素晴らしくクイックで、シャシー・バランスは極めて高い。アクセルペダルとリアタイヤは、見事に調和して機能。高速コーナーでは、新たな空力特性の効果を実感する。同時に、880psを完全に受け止めるグリップ力が頼もしい。

凄まじく速い。フロントノーズが、常に若干向きを変えているように感じるほど。8速デュアルクラッチATの変速速度は、ポルシェ911 GT3のPDKほどではないとしても。

望外に魅力的な公道での走り まるで以心伝心

フィオラノ・サーキットを出て、イタリアの公道へ。ここでは、オンロード向けに仕立てられた、別の296 スペチアーレが待っていた。サスペンションは、磁性流体を用いた標準のマグネライド・ダンパー。アルミ製で5スポークの、ホイールも別物だ。

エラの張ったフロントに、ウイングの付いたテール。公道にはやや場違いな姿かもしれないが、走りは望外に魅力的といえる。乗り心地の良さは、感動的なほど。バンピーロード・モードなら、911 GT3が揺れに悩まされそうな路面でも落ち着いている。

フェラーリ296 スペチアーレのステアリングホイールを握る筆者、リチャード・レーン
フェラーリ296 スペチアーレのステアリングホイールを握る筆者、リチャード・レーン

3200rpm前後で最大トルクの75%を得られるから、常時余力が控えている。ステアリングの手応えは、僅かに重い。姿勢制御も296 GTBより少しタイトだが、直感的な操縦性は、まったく失われていない。

以心伝心するように、ドリフトが良いのか、グリップが良いのか、シャシーは理解してくれる。不自然さが僅かにあるとはいえ、痛快至極。皮肉的なドライバーでも、この楽しさには素直になるはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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