ジャガーEタイプxフォード・ギャラクシー 8.5L V8エンジンのイーガル 忘れられない衝撃 後編

公開 : 2022.09.10 07:06

アメリカのレストアで当初と違う姿に

彼が購入した時点で、イーガルはネイビーブルーに塗装されていた。ホイールはボラーニ社製のワイヤータイプから、現在も履いているJAピアース社製のアルミホイールに交換されていたという。

「グリップを強めるため、ダンロップのスリックタイヤに自ら溝を切って履かせていました。車高が低く、ヒルクライムでボディがバウンドしてもエグゾーストに当たらないよう、スキッドプレートも溶接しました」

ジャガーEタイプ・イーガル(1964年/英国仕様)
ジャガーEタイプ・イーガル(1964年/英国仕様)

「激しく走ると、火花が散るんです。楽しかったですよ。何よりトルクが凄かった。ちょっとやりすぎなクルマが大好きでしたからね」

1980年にマッカラムはスティーブ・モース氏という人物から電話をもらう。英国車用の部品製造業をロサンゼルスで営む人物で、単刀直入にイーガルを購入したいと希望を伝えてきたという。

「大切に乗っていたので、想定した価格を2倍にして提案しました。それでも彼はイーガルを諦めませんでした。住宅ローンと2人の子供を理由に、売却を決めたんです。ちょっと馬鹿げた考えでしたね。モースさんは25年ほど所有したようです」

さらに別のアメリカ人コレクターへ渡ったイーガルは、最近になって英国のジャガー専門家、クリス・キース-ルーカス氏のもとへやって来た。レストアされたばかりだったが、久しぶりに再会したマッカラムは仕上がりへ納得できなかった。

クルマを作ったベックとリチャードソンの頃とは、異なる見た目になっていた。キース-ルーカスも疑問を抱き、マッカラムへ相談したようだ。

ジャガーとフォードが融合したEタイプ

フロントノーズのエアインテークも、当時の画像と形状が違っていた。ボンネットが交換された可能性があった。記録写真をさかのぼり、1968年にエアインテークの形状が変えられていたことを発見したそうだ。恐らく、修復が目的だったのだろう。

キース-ルーカスは、クルマを調べるほど独創性の高い内容に関心を強めていった。1960年代にリチャードソンが手掛けた、ガス溶接の跡などにも惹かれたという。

ジャガーEタイプ・イーガル(1964年/英国仕様)
ジャガーEタイプ・イーガル(1964年/英国仕様)

結果的に、ボディシェルとフロント・サブフレームはオリジナルのままだった。シャシーには、2人が試行錯誤したトランスミッション用のブラケットが残っていた。見た目的には大幅に手が加えられていたが、内側ではイーガルは健在といえた。

キース-ルーカスが内容に納得すると、イーガルは新しい所有者のもとへ引き渡された。2021年の夏に開催された、英国のジャガーEタイプ・クラブの60周年記念イベントで、華々しく披露されている。

現在は違っているが、1960年代当時の姿へ戻す計画が立てられている。このクルマに関わった多くの人物が、過去を共有するために協力を申し出ているらしい。

1台限りといえる、ジャガーとフォードが融合したEタイプ。V8エンジンの響きには、1度体験すれば忘れることのできない衝撃がある。イーガルが人々へ与える興味や関心は、サウンドに負けないくらい大きなもののようだ。

協力:CKLデベロップメンツ社、クリス・キース-ルーカス氏、ジェームズ・フレイザー氏、アラン・ブルックス氏、トム・マッカラム氏、ピート・ストウ氏

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームズ・ページ

    James Page

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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