6速MTが強める独自性 トヨタ・スープラ 3.0 MTへ試乗 シャシーもチューニング

公開 : 2022.09.25 08:25

スープラの6速MT版が英国へ上陸。シャシーもチューニングを受け、独自性を一層強めたと英国編集部は評価します。

6速MTと同時にシャシーもチューニング

残念な事実だが、英国に住む筆者はトヨタGRカローラを正規に購入できない。ホットハッチへの理解が他国より深いこの国で、GRヤリスが与えた大きな影響を考えれば、なんとも悩ましい事実だ。

しかし、トヨタは英国を見捨てたわけではない。ガズーレーシングが手掛けたスープラに6速MT版を追加し、導入してくれるという。ただし、5代目は心底魅了されるほどのFRスポーツカーではなかった。MTが与える変化はいかほどだろう。

トヨタ・スープラ 3.0 MT(英国仕様)
トヨタ・スープラ 3.0 MT(英国仕様)

またトヨタは同時に、スープラのシャシーにも手を加えている。2022年版ではアンチロールバーを引き締め、ダンパーの減衰力を向上。パワーステアリングの設定も改めたという。

その目的は、スープラを一層ダイレクトで魅力的なスポーツカーに仕立てるため。操縦性を磨くことで、ポルシェ718ケイマンとの関係性を一層ややこしくしよう、という考えだ。

アルミホイールは19インチの鍛造品。2脚のシートも軽量化され、8速ATのスープラと比較して約40kgも軽量化されている。

ちなみに英国版のスープラ・プロでは、レザーで覆われたパワーシートにJBL社製の12スピーカー・サウンドシステムなどが搭載され、20kg重くなる。贅沢な装備は軽くない。

2.0L 4気筒エンジンを積むスープラでは、MTを選べない。トヨタGR86がその代わりということかもしれないが、限定販売の英国では既に完売状態にある。

小さななフェラーリ550マラネロのよう

今回は、一般道で6速MTのスープラを試乗させていただいた。その最大の魅力は、6気筒エンジンを搭載した2シーターのクーペで、ドライバー自ら直接ギアを選べるというところにある。

価格は5万3495ポンド(約882万円)と、このクラスではお手頃な側にある。FRモデルとして絞ると、英国のこの価格帯にはスープラ以外に選択肢はない。それだけで、気持ちが動くドライバーは少なくないだろう。

トヨタ・スープラ 3.0 MT(英国仕様)
トヨタ・スープラ 3.0 MT(英国仕様)

適度にタイトなコクピットに、低めのドライビングポジション。電子制御LSDの直前に座っているような感覚。コンパクトなフェラーリ550マラネロのような、そんな雰囲気を楽しむことができる。

シフトレバーの動きは軽くメカニカルで、ATのパドルを引くこととは比べ物にならない楽しさがある。クラッチペダルはストロークが長めだが、テンポよく早めにシフトアップしていけば、太いトルクバンドを活用できる。

レッドラインまで回転数を引っ張ってのシフトアップも、充分に滑らか。BMW由来の直列6気筒ユニットは、重いクランクシャフトの慣性が小さくないものの、回転数を調整しながらのシフトダウンも難しくない。

ヒール&トウに不慣れなら、自動的に回転数を合わせてくれるレブマッチ機能も使える。市街地でも運転しやすいクーペだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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