世界最高の座を狙う ロールス・ロイス・シルバーシャドー キャデラック・セビル ジャガーXJ12 後編

公開 : 2022.09.25 07:06

1970年代後半の世界最高のクルマとは。ロールス・ロイスに挑んだキャデラックを、ジャガーとともに英国編集部が振り返りました。

違いが鮮明なシルバーシャドーとセビル

ロールス・ロイス・シルバーシャドーIIの大きなパルテノングリルの頂部には、オプションだった女神像、スピリット・オブ・エクスタシーが輝く。高級リムジンといえばコレだろう。見慣れた筆者でも、特別な印象を受ける。

初代オーナーは、贅沢にオプションを選ばなかったようだ。標準のレザーではなく、肌触りの良いベルベット生地でシートが仕立てられている。現在の走行距離は4万6600kmほど。新車のように美しい。

ブラックのキャデラック・セビルとゴールドのロールス・ロイス・シルバーシャドーII、ホワイトのジャガーXJ12 LWB
ブラックのキャデラック・セビルとゴールドのロールス・ロイス・シルバーシャドーII、ホワイトのジャガーXJ12 LWB

直立したダッシュボードはウオールナット・ウッドで仕上げられ、多くのメーターやスイッチ類が並び、見た目に心地良い。シフトセレクターはステアリングコラムから伸びる。

ゆったりしたリアシート側は、太いCピラーで挟まれている。プライバシーを気にかけるオーナーでも、隠れる場所があり安心だ。

ロールス・ロイスからキャデラック・セビルへ乗り換えると、その違いが鮮明になる。マシュー・ライト氏が所有する1977年式は正規輸入車ではないものの、左ハンドルであること以外、基本的には英国仕様と変わらないという。

シャープなスタイリングは、シルバーシャドーやジャガーXJ12よりモダンに思える。クロームメッキが仰々しいフロントグリルやバンパーは好みが分かれそうだが、プロポーションも悪くない。

インテリアでは、レザーで仕立てられたシートが主張するものの、ロールス・ロイスの品質には届いていない。ダッシュボードを覆うウッドパネルはフェイク。それを、機能や装備の物量で補っている。

フォーマルさよりスポーティ度が高いXJ12

キーを挿したままドアを開くと、警告音が鳴る。フロントフェンダー上の光ファイバーで灯るライトは、電球切れの警告灯になっている。温度調整できるエアコンも、1970年代では先進的な装備だった。

シートは電動で動き、トランクリッドにはソフトクローズ機構を内蔵。好燃費で走行中だと教える表示やオートヘッドライトなどは、現代モデルにも負けていない。

ジャガーXJ12 LWB(1973〜1979年/英国仕様)
ジャガーXJ12 LWB(1973〜1979年/英国仕様)

横に長いスピードメーターは、時速85マイル(136km/h)まで振られている。ところが、実際の最高速度は169km/hだった。

オールド・イングリッシュ・ホワイトに塗られたジャガーXJ12は、マックス・ホルダー氏がオーナー。そのインテリアが醸し出す雰囲気は、シルバーシャドーとセビルの中間といったところ。

ボディサイズは1番小さく、だいぶ小柄に感じてしまう。スリムなリアのCピラーと引き締まったボディラインで、フォーマル感よりスポーティ感の方が強い。運転席の着座位置が低く、人間工学的にもベストだ。

1970年代のブリティッシュ・レイランド由来のスイッチ類が、高級感の漂うウッドのダッシュボードで浮いている。3台では新車価格が最も安かっただけあって、装備は質素。エアコンは備わるが、クルーズコントロールは付いていない。

クリーミーに回転するV型12気筒エンジンを目覚めさせ、フロアシフトでDを選択すると、秀でたフィーリングで嬉しくなる。ロックトゥロックは3回転でレシオは他の2台と大差ないものの、精度の高さは別格。手のひらへ伝わる感触も濃い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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