GT3カップを超えるアクティブエアロ ポルシェ 911 GT3 RSへ試乗 前例ないシリアスさ 前編

公開 : 2022.10.06 08:25

GT3カップより多くのダウンフォースを生むGT3 RS。歴代よりシリアス度を増した最新版へ、英国編集部が試乗しました。

巨大リアウイングに妥協ない空力機能

近年のバッテリーEVやハイブリッド・スーパーカーの最高出力に見慣れてしまうと、最新のポルシェ 911 GT3 RSが発揮する525psには驚かないかもしれない。だが、このクルマの核心はそこではない。

レン・スポルトを冠する軽量で特別なGT3 RSには、ワイドなボディに数多くの最新技術が投入されている。ただし、992型の911 GT3より車重は若干重く、最高出力は僅かに高いものの、最大トルクは若干だが細い。

ポルシェ911 GT3 RS(欧州仕様)
ポルシェ911 GT3 RS(欧州仕様)

さらに英国価格は、911 GT3より3万3000ポンド(約544万円)も高い。確かに、一見すると大きなアドバンテージはなさそうに思える。

しかし、このGT3 RSはポルシェのGT部門が手掛けた、エクストラ・スペシャルな911だと断言できる。実際、ファンの間では極めて高い人気を誇り、購入希望者のなかでも手にできる人は一握りに限られる。

彼らは、凄まじいダウンフォースに吸い寄せられているのかもしれない。何しろ、911のレーシングカーより強力なのだ。

過去に例がないほど、最新のGT3 RSには巨大なリアウイングが与えられた。その高圧的にすら見える幅や高さには驚かされる。加えて、空力的な付加物にも妥協はない。いかにもレーシングカー然とした容姿だ。

ボディ幅いっぱいに広がったリアウイングには、油圧で角度が変化する、アクティブ・ドラッグリダクション・ベーンと呼ばれる機能も組み込まれている。フロントノーズの下側には、同様に働くアクティブ・フラップが内蔵されている。

GT3カップより強力なアクティブエアロ

これらが機能すると、284km/hでの走行中に最大860kgのダウンフォースが生成されるという。実に、991型911 GT3 RSの2倍以上の力でボディが路面へ押さえつけられることになる。マクラーレン・セナが同等の速度で生む力より大きい。

さらにいうなら、最新の911 GT3カップ・レーシングカーよりも強い。ポルシェの開発ドライバーが公道用のGT3 RSからスリックタイヤを履くGT3カップに乗り換えた場合、コーナーではスピードを若干落とす必要があるかもしれない。

ポルシェ911 GT3 RS(欧州仕様)
ポルシェ911 GT3 RS(欧州仕様)

このアクティブエアロの賢いところは、ダウンフォースを必要な時に必要なだけ生み出せること。ドライバーはボタン1つで、アクティブエアロのスイッチを切ることができる。そうすれば、抵抗を抑えて直線スピードを稼ぐこともできる。

オンの状態なら、必要なダウンフォースを生成するよう、制御をGT3 RSにお任せできる。グリップ状態に合わせて。

ポルシェは、ワイドなボディや広がったトレッド、大径のホイール、アクティブエアロにまつわる電動アクチュエーターや油圧システムなどで増える重量を、可能な限り相殺した。その結果、車重は1450kgに留めている。

フロントフェンダーやバンパー、ドア、ルーフ、ボンネットはカーボンファイバー製。クラブスポーツ・パッケージに設定されるスチール製のロールケージも、希望すればカーボン製に変更できる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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