BMW M最安の高性能クーペ 新型M2、先代との違いは? 社長にインタビュー

公開 : 2022.10.12 21:05

BMW M部門を率いるフランク・ファン・ミールCEOにインタビュー。発表されたばかりの新型M2クーペについて、先代との違いや価格設定について訊きました。

先代モデルから何が変わっているのか

第2世代となるBMW M2クーペが発表された。英国向けの価格は6万1495ポンド(約1000万円)から。

BMW M部門で最も安価に販売されるモデルであること、純粋な内燃機関を使用する最後の世代であること、マニュアル・トランスミッションを搭載するスポーツカーであること、先代モデルよりも飛躍的に改善された走行性能など、さまざまな理由から新型M2クーペは重要な意味を持っている。

BMW Mのフランク・ファン・ミールCEOは、新型M2は派手さを少し抑え、速くなったと語る。
BMW Mのフランク・ファン・ミールCEOは、新型M2は派手さを少し抑え、速くなったと語る。    AUTOCAR

BMW Mを率いるフランク・ファン・ミールCEOが証言するように、M2クーペはM部門設立当初の思想に最も忠実な現代版Mモデルである。彼はAUTOCAR英国編集部の取材に応じ、先代モデルとの違いや、ラインナップの中でどのような役割を担っているかを説明してくれた。

――先代M2のどこを変える必要があったのでしょうか?

「先代ではリアアクスルに遊びがあり、ドリフトを大いに楽しむことができましたが、サーキットでは最速ではなかったと思います。今回、変えたかったのはここです。フットワークは軽いまま、サーキットではさらに速くなり、リアアクスルの緩みも少なくなっています」

「セッティングを変えればこれまで通りドリフトもできますが、サーキットで本格的なレースモードにすると、より正確な走りを見せます。先代M2も正確でしたが、新型はある意味、華々しいとは言えないかもしれません。華やかだと遅くなりますから」

――マニュアル・トランスミッションを設定するかどうかで激しく議論したそうですが、このような議論はよくあることなのでしょうか?

「いいえ。BMWの中でもMは非常に高い評価を受けていますし、信頼も得ているので、何をするにも自由度が高いのです。しかし、プラットフォーム全体に存在しないトランスミッションを追加するとなると、少し長い話し合いが必要になりますね」

街中を走っているだけでも楽しい

――Mは今後も、この価格帯のクルマを販売できると思いますか?

「潜在的なお客様というのは、何らかの限界を持っているものです。例えば、価格の限界もそうですね。もちろん、どんどん高くすることはできますが、それではお客様やファンを大勢失うだけです。そのため、これからもこの価格帯のクルマを提供できるように努力します」

――Mは今でもラップタイムを気にする顧客が多いのでしょうか?

「クルマを買う理由は、キャラクターだと思います。すべてのお客様がクルマのキャラクターを大切にしていると思いますよ。そのうちの何人が本当にサーキットに通っているかというと、かなり多いでしょうね。米国では、自分のクルマでサーキットに行くお客様がとても多いことがわかっています。欧州でも、ファン同士が集まってサーキットに行ったり、当社主催のイベントに来たりしています。これは、クルマで何ができるのかを知っているからだと思います」

BMW M部門のエントリーモデルとして、M2は重要な役割を担っている。
BMW M部門のエントリーモデルとして、M2は重要な役割を担っている。    BMW

「それから、Mの正確さと俊敏さは、サーキットでしか感じられないものではないということが言えます。エンジンをかけ、シートベルトをすれば、まるでレーシングカーに乗り込むような感覚になります。『よし、これは真剣勝負だ、マシンと一体だぞ』という気持ちになるんです。そして、たとえ50km/hで走ったとしても、この正確さを感じることができるのです。都心で交差点を曲がるだけでも……ちょっと言葉では表現が難しいんですけどね。多くのクルマは、曲がるときはそのまま、ただ曲がるだけですよね。(Mの場合は)精密な作業で、街を走っているだけで楽しいはずです」

――量産車の開発では、やはりモータースポーツの経験から多くを学ぶのでしょうか?

「そうです、モータースポーツはクルマの精度を高める方法を教えてくれますから。モータースポーツでは、正確でなければ勝てません」

「そしてそれは、レーシングカーから量産車へと受け継がれていくものなのです。また、これはかつて、M3やM5を開発した背景でもあります。わたし達は、『レーシングカーかセダンかを決める必要はなく、1台で両方を手に入れることができる』と考えたのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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