英伊独のお国柄 ジャガーMk2 アルファ・ロメオ1300 TI BMW 1800 サルーン比較 前編

公開 : 2022.10.29 07:05

BMWとアルファ・ロメオの傑作サルーン誕生から60年。同時期のジャガーとともに、英国編集部がご紹介します。

好対照な見た目のジャガーとアルファ、BMW

1960年代の英国では、自動車業界に大きな影響を与えるできごとがあった。その1つは、欧州経済共同体(EEC:EUの前身)で輸入車の制限が解除され、掛かる関税が30%へ引き下げられたこと。

輸入車には、まだ少なくない額の税金が課せられていたことは間違いない。とはいえ、ドイツやフランス、イタリアで作られたモデルへ、多くの英国市民が誘惑されたことも間違いない。

レッドのジャガーMk2 2.4と、ホワイトのアルファ・ロメオ・ジュリア 1300 TI 、アイボリーのBMW 1800
レッドのジャガーMk2 2.4と、ホワイトのアルファ・ロメオジュリア 1300 TI 、アイボリーのBMW 1800

「英国の自動車産業にとって最も望ましくない統計結果の1つが、近年輸入されるクルマの劇的な増加といえます」。1970年2月の議会でコベントリーを代表する議員、モーリス・エデルマン氏は発言している。

1960年の英国市場で、EECから輸入した自動車の占める割合は4%に過ぎなかった。英国の議会も自動車ファンも、現実へ目を背けつつ、自国で作られるクルマへ大きな不満は抱いていなかった。しかし、1970年代が始まるまでに10%近くへ増加していた。

1962年に発表された、新しいアルファ・ロメオとBMWへ関心を抱いた人も多かった。105シリーズの初代ジュリアと、ノイエクラッセ、新クラスとして親しまれた1500や1800だ。

同時期のジャガーMk2 2.4とこの2台を並べると、容姿は面白いほどに好対照。ジャガーの格式ある曲線美に比べて、アルファ・ロメオとBMWは、モダニズムを感じさせるシャープなスタイリングが新鮮に映る。

数字の差を感じないほど活発なMk2 2.4

この3台は、英国ではほぼ横並びの価格で売られていた。少なくない英国人が、国産車は少々時代遅れだと思ったかもしれない。一方のジャガー・ファンは、ジュリアやノイエクラッセはボクシーすぎ、禁欲的だと受け止めただろう。

ジャガーには、BMWに備わらないツインカム・エンジンが載っていた。アルファ・ロメオにも装備されない、四輪ディスクブレーキも与えられていた。技術的には、ジャガーが遅れていることはなかった。

ジャガーMk2 2.4(1959〜1967年/英国仕様)
ジャガーMk2 2.4(1959〜1967年/英国仕様)

0-97km/h加速は17.3秒と、ジュリアやノイエクラッセより数秒余計にかかる。だが、実際に運転すると数字の差を感じないほど活発で、太いトルクが余裕を生んでいる。

1度スピードが乗れば粘り強くボディを進め、ヒタヒタと走る安定感が伴う。発進加速でもたつくのは、スローな4速マニュアルと、1406kgという車重によるところが大きい。

ボディのプロポーションは、アルファ・ロメオの幅の狭さと背の高さが目立つ。ワイドなジャガーは現代的な比率といえ、重心位置は見るからに低い。小さなグラスハウスも特徴といえる。

コーナリング中のマナーもフラット。ジャガーのリア・サスペンションは、リジッドアクスルにリーフスプリングと形式はオールドスクールながら、しっかり煮詰められている。高い速度域でも予想通りにラインを維持する。

BMWはテールハッピー。簡単にスライドしたがる。アルファ・ロメオは上下の動きが大きい。3台とも乗り心地は悪くないものの、ベストはジャガーといっていいだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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