英伊独のお国柄 ジャガーMk2 アルファ・ロメオ1300 TI BMW 1800 サルーン比較 後編

公開 : 2022.10.29 07:06

BMWとアルファ・ロメオの傑作サルーン誕生から60年。同時期のジャガーとともに、英国編集部がご紹介します。

抑制的なスタイリングのBMW 1800

ジャガーMk2 2.4とアルファ・ロメオジュリア 1300 TIは、当時の英国とイタリアの自動車産業を鏡のように映し出している。お国柄が良く見えるが、それはBMWのノイエクラッセにも通じる。今回は、1963年に追加された1800にご登場願った。

ボディやインテリアのデザインは、その典型だろう。アルファ・ロメオのように、BMWも1960年代初頭のトレンドを取り入れている。しかし、そのスタイリングはずっと抑制的だ。

レッドのジャガーMk2 2.4と、ホワイトのアルファ・ロメオ・ジュリア 1300 TI 、アイボリーのBMW 1800
レッドのジャガーMk2 2.4と、ホワイトのアルファ・ロメオ・ジュリア 1300 TI 、アイボリーのBMW 1800

随所のクロームメッキが華やかさを加えているものの、ボディは基本的に直線基調。質実剛健なドイツ的思考の現れといえる。

この四角い形状のおかげで、車内は3台のなかで1番広々。全幅が1710mmと広いだけに、Mk2より横方向にはゆとりがあり、四角いグラスエリアによって明るく開放的。頭上空間や前後の広さにも不足はない。

高身長の大人がゆったり長距離移動するなら、リアシート側が良いだろう。荷室も大きい。Mk2 2.4より300kgも軽いにもかかわらず、見事なパッケージングを実現させていることに唸らされる。作りもソリッドだ。

実用性だけでなく、居心地も良い。ジャガーのように贅沢な装飾はなくても、スタイリッシュで細部にまでこだわった造形が与えられている。ステアリングホイールだけでなく、ドアハンドルにも思わず触れたくなる。

アームレストの下側には、金属加工されたクロームメッキの装飾が付く。コスト削減一辺倒ではない、生産技術の高さを感じさせる。

スペック以上にパワフルで印象的な味わい

ボディにも、そんなコダワリが散りばめられている。テールライトのラインと調和された、燃料の給油口しかり。不意にボディサイドへ切られた処理とは異なり、鑑賞に耐えるディティールへ昇華してある。さすがバウハウスのあった国だ。

ステアリングホイールを握ると、ミュンヘンらしい能力を宿していることも見えてくる。見た目は四角いサルーンでも、思い切りテールを流して楽しめる。

BMW 1800(1963〜1972年/英国仕様)
BMW 1800(1963〜1972年/英国仕様)

操舵感や姿勢制御は、ジュリア 1300 TIのようにドライバーの気持ちを刺激するほどではない。それでも、1773ccの直列4気筒SOHCエンジンの実力を発揮させるのに、不足ないシャシーといえる。

2台のDOHCエンジンと比較すればエキゾチックといえないものの、このM10型は1962年のノイエクラッセ、1500で初導入されたもの。当時のBMWの最新ユニットだった。スペック以上にパワフルで、印象的な味わいを有する。

サウンドもアルファ・ロメオほど堪能できるものではないが、回転域を問わずたくましい。扱いやすく運転しやすい。

1800で少し残念なのがトランスミッション。記憶の中のBMWは、もう少し優れたシフトフィールを備えていたはずだから、恐らくブッシュ類の寿命なのだろう。E30型のBMW M3より、フォルクスワーゲンビートルに近かった。

シフトレバーの動きが曖昧でゲートを辿りにくく、ストロークも長い。レバーが傾きすぎて、2速ではシートに当たっていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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