英伊独のお国柄 ジャガーMk2 アルファ・ロメオ1300 TI BMW 1800 サルーン比較 前編

公開 : 2022.10.29 07:05

1.6L並みのパワーを実現させた1.3L

そのかわり、低速域では車重を意識してしまう。パワーアシストの付かないステアリングは、高速域に届くまで重いまま。レシオ自体もスローで、操縦性には、良くいえば重厚感が漂う。

開けた道では、有能なクルーザーになる。市街地の入り組んだ道では、少々扱いにくい。追ってくる警察からMk2 2.4で逃亡するなら、パワーステアリングを追加するか、かなりのマッチョでなければ厳しそうだ。

アルファ・ロメオ・ジュリア 1300 TI (1964〜1972年/英国仕様)
アルファ・ロメオジュリア 1300 TI (1964〜1972年/英国仕様)

実際、ジャガーは急速に伸延していく英国の高速道路網で活躍した。枕のように心地良いシートへ体を委ね、安定したハイスピード・ドライブに浸ることができた。2.4Lエンジンのトルクで、シフトダウンせずとも追い越しを余裕でこなせた。

Mk2 2.4が現役の頃、英国の高速道路には速度制限が設けられていなかった。4速MTにオーバードライブという組み合わせは、5速MTより技術的な強みはない。それでも、クルージング時に指先1つでシフトダウンできる構造は、ドライバーの味方だった。

他方、アルファ・ロメオ・ジュリア 1300 TIは1964年に追加されたお手頃グレードで、Mk2 2.4より格下のモデルではある。しかし、同クラスに相当する2600は英国では2倍も高かった。

1290ccの直列4気筒エンジンは、2483cc直列6気筒の相手にはならなそうに思える。ところがイタリアの技術は、それを叶えていた。

英国とは異なり、排気量で税金が変わる自国市場を見据えて開発された1.3Lツインカム・ユニットは、同時代の1.6L並みのパワーを実現。最高出力はジャガーの121psに対し86psと、排気量ほどの開きはない。

軽快さや機敏さが楽しい1300 TI

回転数を引っ張って、素早く次のギアを選べる5速MTを駆使すれば、1300 TIは0-97km/h加速を13.3秒でこなす。スポーツカーと呼ぶには遅いけれど。

3台に共通するが、ステアリングホイールは大きい。1300 TIでは切り始めに遊びが少し目立つが、重み付けは良く、フロントタイヤとコミュニケーションを取りやすい。適度にクイックで正確にラインを辿れる。

アルファ・ロメオ・ジュリア 1300 TI (1964〜1972年/英国仕様)
アルファ・ロメオ・ジュリア 1300 TI (1964〜1972年/英国仕様)

カーブでは、シトロエンのようにボディがロールする。背の高いボディと起き気味の運転姿勢が傾きを大きく感じさせるものの、運転する時間が長くなるほどアルファ・ロメオを理解できる。クルマと息を合わせれば、狙い通りに路面へしがみついてくれる。

コーナリングスピードが最速というわけではないが、軽快さや機敏さが楽しい。さらに、ドライバーの気持ちを刺激するのがブレーキ。しっかりしたペダルの踏み心地と、素晴らしい制動力を備えている。ほかの2台も悪いわけではないが。

1300 TIのインテリアは、かなりベーシック。質素なダッシュボードにメーターが3枚並ぶ。シートは硬めのビニール張りだ。メーター自体は美しい。径が大きく見やすく、ドライバーズカーらしくパネルがカウルで覆われている。

車内は、助手席の人と肩が触れるほどタイト。荷室は小さいながら、四角いボディ形状のおかげで実用的な大きさは悪くない。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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