5.4Lへ拡大し354psと53.9kg-mを達成

2代目となるW120型のEクラスは、E39型5シリーズより前の1995年に登場。スペック的に驚くことはなかったかもしれないが、BMWへ対峙できる唯一の存在といえた。

サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン式、リアがマルチリンク式で、ステアリングラックはラック&ピニオンを採用。上質さと洗練性を追求したEクラスは、生まれた時から優れたシャシー能力も備えていた。

メルセデス・ベンツ E55 AMG(W210/1998〜2002年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ E55 AMG(W210/1998〜2002年/英国仕様)

メルセデス・ベンツが買収したAMGの、格好のベースにもなり得た。最初に登場したのはE36 AMG。しかし、3.6Lの直列6気筒エンジンは先代のW124世代からのキャリーオーバーで、さらなる高性能化は避けられなかった。

E 55 AMGでは、Eクラスのトップグレードに搭載されていた4.3L V型8気筒エンジンをチューニング。排気量は5.4Lまで拡大され、最高出力354ps、最大トルク53.9kg-mを得ている。

自然吸気でありながら、50.9kg-mという太いトルクを2500rpmから4800rpmという広い回転域で発揮したのが特長だった。お気づきかもしれないが、これはBMW M5の最大トルクだ。

2001年にはマイナーチェンジを受け、E 55 AMGは僅かにパワーアップ。一層強力なE 60 AMGも追加されている。こちらの排気量は6.0Lで、最高出力は381psに到達。晩年に投入された限定モデルでは、6.3Lで404psを実現した。

とはいえ、E39型M5最大の対抗馬として量産されたのはE 55 AMGだろう。約1万2000台がラインオフし、主にドイツ・アウトバーンの追い越し車線で覇権を争った。

シリアスに仕立てられたSタイプのR

M5とE 55 AMGの登場を、ジャガーは静観できなかった。この2台が英国を走り始める頃、上品で礼儀正しいXJRは新型のSタイプへ一新。当時親会社にあったフォードの資金によって、「R」の計画が進められた。

販売へこぎつけたのは、21世紀になった2002年。専用のボディキットとレトロモダンなワイヤーメッシュ・フロントグリル、ダークカラーのボディトリムを身にまとい、クロームメッキで着飾っていたSタイプはシリアスに仕立てられた。

ジャガーSタイプ R(1999〜2007年/英国仕様)
ジャガーSタイプ R(1999〜2007年/英国仕様)

車高は落ち、フェンダーアーチを18インチ・ホイールが満たした。路面に低く構えたスタンスは、過度に主張することなくライバルへ伍する能力をアピールした。

優雅なラインのボンネット内には、スーパーチャージドV8エンジンを搭載。新しいヘッドとピストンなどで排気量は4.2Lへ増え、ブロワーとエグゾーストシステムにも改良を受けている。

BMWと同様に、サスペンションへジャガーはしっかり時間を割いた。Sタイプ R用のサブフレームには、アルミニウム製のリンクが取り付けられている。CATSと呼ばれたアダプティブダンパーは、減速時や旋回時にボディを水平に保持した。

Sタイプは2002年にフェイスリフトを受け、ルーフパネルがレーザー溶接されるなどボディ剛性が向上していた。さらにRでは、リアシート後方に補強パネルが追加され、一層の高剛性化が図られていた。

ただし、E 55 AMGと同様にリミテッドスリップ・デフは不採用。トラクション・コントロールの能力を存分には発揮できなかった。

この続きは中編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アーロン・マッケイ

    Aaron McKay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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