マセラティの切り札、グレカーレ試乗 1000万円切りの新型SUV 魅力は価格だけじゃなかった!

公開 : 2022.12.27 06:25

内装 セレクターボタン発見

セレクターレバーが消滅して、上下2段のセンターディスプレイ中央のボタンに置き換えられ、ナビやオーディオだけでなくエアコンの操作系もタッチパネルとなった。メーターもフルデジタルになり、ドアはボタンで開ける。

ビトゥルボ以降、マセラティの象徴であり続けてきたインパネ中央の時計さえ、液晶表示になっていた。レヴァンテよりひと世代新しいSUVという印象を受けた。

グレカーレGTの前席(内装色:グレージュ)。シフトセレクターは、上下2段のディスプレイの間に配置された4つのボタン。左から「P」「R」「N」「D/M」。
グレカーレGTの前席(内装色:グレージュ)。シフトセレクターは、上下2段のディスプレイの間に配置された4つのボタン。左から「P」「R」「N」「D/M」。    神村聖

張りの強いレザーで覆われたシートは、サイドの張り出しは適度で、山道でのホールドより都市内でのアクセスを重視した形状。

驚いたのはリアで、レヴァンテより広いのではないかと思うほど。身長170cmの自分なら楽に足が組める。

真横から2台を見比べると、ノーズの長さに大差がある。レヴァンテのほうが、昔ながらのマセラティらしいプロポーションだが、プラットフォームのパッケージング効率が長けているのはグレカーレだ。

ラゲッジスペースも、オーバーハングは短めであるものの、十分な広さを確保しており、背もたれの前倒しレバーを前後に備えるなど、使い勝手への配慮も確認できた。

では走りはどうか。

400kgの差 仕立ての違いとは

最初にレヴァンテをドライブし、次にグレカーレで同じ道を走ったら、取り回しがはるかに楽だと感じた。ノーズのボリュームの違いはやはり歴然としているし、幅も確実に狭い。

さらにこの感覚は、軽快な身のこなしのおかげでもあることに気づいた。

マセラティ・グレカーレGT(ブロンゾ・オパーコ)。
マセラティ・グレカーレGT(ブロンゾ・オパーコ)。    神村聖

グレカーレGTの車両重量は1870kgと、レヴァンテGTの2280kgより400kg以上軽いのだ。重厚感を漂わせるレヴァンテから乗り換えると、スポーティという言葉を使いたくなるほどだった。

マイルドハイブリッドのエンジンは、最高出力こそレヴァンテより30psダウンの300psになるものの、この軽さのおかげで、むしろ俊敏に感じた。

エンジン音も、騒々しくないレベルでレヴァンテより明確にキャビンに届いてきて、この点でもスポーティだった。

一方共通して言えるのは、マイルドハイブリッドとターボの連携のうまさ。

「らしさ」はSUVでも健在!

穏やかな加速では、モーターアシストからターボの立ち上がりへのつながりがシームレスなのに対し、スロットルペダルを大きく踏み込めば300psにふさわしいダッシュが得られる。

パドルが金属製なのは五感を大切にするマセラティらしいし、ステアリングのダイヤルで切り替えるドライブモードがパワートレインとサスペンションを別々に選べるところも伝統どおりだった。

後席のスペースは「レヴァンテより広いのではないかと思うほど」と筆者。ドアは、丸いボタンを押して開く。
後席のスペースは「レヴァンテより広いのではないかと思うほど」と筆者。ドアは、丸いボタンを押して開く。    神村聖

ちなみに双方ともにスポーツモードにすると、パワートレインはレスポンスがシャープになるとともに、音も昔ほどではないが活発になる。ステアリングの切れ味は鋭くなり、身のこなしはさらに機敏になる。

それでも足回りはガチガチではなく、優しさのある硬さなので、スロットルやステアリングの操作で姿勢を変化させ、より気持ちよく曲がって行くことができる。

グレカーレを選ぶユーザーが、この特性をどのぐらい評価してくれるかはわからないけれど、マセラティらしい部分を残してくれたことは個人的に嬉しかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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