新型「SL」 2Lターボでも、上級オープンカーの優等生 ハードルは1600万円超えの価格

公開 : 2023.01.02 11:25  更新 : 2023.01.02 12:00

AMG SLのレシピ 加速の味付け

とはいえ400ps近い最高出力を発揮する2Lターボだ。

高回転まで衰えることのない豊かなトルクを維持。加速のキレと伸びやかさはAMG車らしい。加速性能も昂揚感もスポーツモデルとして何の不足もない。

メルセデスAMG SL 43(AMGモンツァグレーマグノ:マット)
メルセデスAMG SL 43(AMGモンツァグレーマグノ:マット)    神村聖

ただ、SL 43をドライブしているとそれが余技として思えてしまう。

本領は“悠々としたドライブフィール”。例えば登坂・加速でアクセルを踏み込んだ時、初期のトルク立ち上がりに重きを置いた加速を示す。

後半の加速の伸びは穏やかで、時としてマニュアル変速を挟んでリズムを刻むもよし。攻める速さではなく、体感的にもストレスがなく心地よい加速感が印象的。「悠々」と「意のまま」の按配が妙味だ。

オープンカーは車体剛性がウィークポイント。中でも捻り剛性の確保が厳しい。しかし、SL 43は操安性でも乗り心地でもオープンカーのハンデを感じさせなかった。

乗り心地/ハンドリングについて

ハンドリングは徹底的な安定志向。

400psに近いパワーとFRの2WD。切れ味のよさ、あるいは軽快な姿勢変化はラフなアクセルコントロールで破綻しやすい。

SL 43の前席(内装色レッドペッパー/ブラック:ナッパレザー)。日本法人は「安全上の理由から後席は対応身長150cm以下、チャイルドシート装着時は対応身長135cm以下」としている。
SL 43の前席(内装色レッドペッパー/ブラック:ナッパレザー)。日本法人は「安全上の理由から後席は対応身長150cm以下、チャイルドシート装着時は対応身長135cm以下」としている。    神村聖

SL 43は急激な回頭性や後輪への負担増を抑え、操舵に穏やかに追従する操縦性を示す。

ある意味では鈍いとも思えるが、コントロール感に曖昧さはなく、狙ったラインに乗せやすく、後輪のトラクションで姿勢を安定させやすくもある。後輪に荷重とトラクションが掛かったFRの「いい感じ」を楽しみやすい特性でもある。

乗り心地面で感心させられるのは車体をシェイクするような、いわゆるブルつきが一切感じられなかったこと。細かな突き上げもサスストロークで吸収するサスセッティングの効果も少なくないが、車体捻り剛性の高さがよく分かる。

しかも、腰のあるストローク制御で収束・据わりも良好。決して柔なサスチューンでないのは前述の操安特性からも理解できるだろうが、“柔を纏った剛”とも表現したくなる乗り心地である。

ハードルを越えられるヒトなら…

SL 43ロードスターは爽快にして頼もしく、上級クラスらしい質感・振る舞いを備えたモデルである。

何よりオープンカーの楽しさをきっちりと味わわせてくれる。付け加えるなら狭いながらも後席を備え、荷室容量もフルオープンにしては広い。同ジャンルでは優等生でもあるのだ。

メルセデスAMG SL 43の荷室。VDA方式の容量は、オープン時が213L。クローズ時が240L。
メルセデスAMG SL 43の荷室。VDA方式の容量は、オープン時が213L。クローズ時が240L。    神村聖

ただ、AMG車でしかもオープンカー。さすがに値も張り価格は1648万円。

ちなみに前項で引き合いに出したC 43よりも500万円以上高価である。生活やレジャーにクルマを積極的に活用するなら、別にファーストカーを揃える必要もあるだろう。

オープンカーに魅力を感じているドライバーにとってSL 43がいかによく出来ているか語っても、コスト面や実用面の“ハードルの高さ”は如何ともし難い。

そういった意味では、プレミアム中のプレミアムでもあれば、クルマ道楽の頂点の1つと言ってもいいかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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