神々しく美しいサーキットマシン パガーニ・ウアイラ Rへ試乗 850psの新NA V12

公開 : 2023.01.19 08:25

レーシングカーより運転体験はフレンドリー

ウアイラ Rに内蔵されたエアジャッキの圧力が落とされ、ドライバーズシートに腰を掛ける。V12エンジンが始動し、一気に緊張感が高まる。

ウアイラ Rはサーキット専用マシンだが、レーシングカーとは異なる。プロドライバーがまくしたてるマシンより、われわれが近づきやすい性格付けが与えられている。ドライビング体験は、比べればフレンドリーなものだった。

パガーニ・ウアイラ R(サーキット専用仕様)
パガーニ・ウアイラ R(サーキット専用仕様)

エンストを防ぐアンチストール機能と電子制御クラッチが内蔵され、発進は思いのほか簡単。ピットレーンの出口を過ぎ、V12エンジンへ送るガソリンの量を増やすと、全身へ伝わる感覚が増大する。過大なほど。

高らかに響き渡るエグゾーストノートは、聴き応えがあるものの、ヘルメットをかぶっていてもうるさい。動力性能は想像したとおり甚大。圧倒されそうになる。

スリックタイヤが徐々に温まり、グリップ力が増す。アンチロックブレーキとトラクション・コントロールの有能ぶりを確認し、安心感が少し湧く。

ウアイラ Rは息を呑むほど速いが、GTマシンほどアグレッシブではない。筆者は偶然にもランボルギーニウラカン・トロフェオ・エボを同じサーキットで以前に運転しているが、サスペンションはよりハードだったと記憶している。

こちらの方がソリッドで、ターンイン時のマナーも落ち着いている。ドライバーのミスも多少は許してくれる。コーナー内側の縁石へ乗り上げても、歯を食いしばる必要はない。舗装の古いサーキットでも楽しめそうだ。

サーキットの主役になる超大作

速度の上昇とともに、巨大なウイングとディフューザーの効果が表れ出す。ダウンフォースを最大に設定すれば、320km/h時に1000kgの力を生成するらしい。

サーキットでウアイラ Rの真の速さを体験するには、相応の筋力や体力も求められる。加減速や旋回時に発生するGは、相当なものだからだ。

パガーニ・ウアイラ R(サーキット専用仕様)
パガーニ・ウアイラ R(サーキット専用仕様)

オプション抜きで約230万2000ポンド(約3億6831万円)を支払えるオーナーが、そんな身体能力を備えているのか、余計かもしれないが心配してしまう。筆者は5周目で首が痛くなった。もちろん、ウアイラ Rは平然とした様子だった。

カーボンセラミック・ブレーキのタッチもまったく不変。強力な制動力を発揮し続けていた。

オラチオは、公道用のウアイラとは根本的に異なるウアイラ Rが高い評価を得られるか、確信を持てなかったという。だが、そんな心配は無用だったらしい。予定の30台は完売している。沢山のオプションとともに。

ウアイラ Rの1台分のコストで、本物のレーシングカーを用意して数シーズンはレースに出られる。しかし、この価値はそれ以上というべきか、別のところにある。

サーキットを攻めるだけのマシンではない。見る人の心を震わせる、孤高のハイパーカーだ。ピットレーンでは、多くの眼差しが向けられるに違いない。

本物を目にするチャンスが得られそうなら、ぜひ時間を割いて直接感じて欲しい。魅了されるフォルムや、荘厳なサウンドを。サーキットの主役になる超大作だ。

パガーニ・ウアイラ R(サーキット専用)のスペック

英国価格:約230万2000ポンド(約3億6831万円)
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:321km/h
0-100km/h加速:3.0秒以下
燃費:−
CO2排出量:−
乾燥重量:1050kg
パワートレイン:V型12気筒5998cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:850ps/8250rpm
最大トルク:75.9kg-m/5500rpm
ギアボックス:6速シーケンシャル・マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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