神々しく美しいサーキットマシン パガーニ・ウアイラ Rへ試乗 850psの新NA V12

公開 : 2023.01.19 08:25

イタリアの鬼才が生み出すハイパーカー、ウアイラ。実質的に新開発といえるサーキット仕様を英国編集部が評価しました。

サーキット専用の美しいハイパーカー

イタリアのパガーニが新たに発表したウアイラ Rは、世界で最も崇高で、最も非実用的なモデルの1台といっても過言ではないだろう。そのお値段も驚くほどだが。

イタリア北東部の小さな町から生み出されるハイパーカーは、普段使いしやすいわけではないものの、少なくとも一般道を走ることができた。相応の勇気があれば。だがウアイラ Rは、閉ざされた私有地かサーキット以外を走ることはできない。

パガーニ・ウアイラ R(サーキット専用仕様)
パガーニ・ウアイラ R(サーキット専用仕様)

それでいて、芸術作品のように神々しく美しい。安全が確保された走行可能な場所であっても、限界まで攻める気にはなれないほど魅惑的だ。

筆者がフィアット・パンダのレンタカーでローマ郊外の空港からヴァレルンガ・サーキットへ近づくと、まったく異なる世界感が待っていた。鼓膜を激しく震わせる、古いF1マシンのような咆哮が周囲を満たしていた。

グランドスタンドやコントロールタワーに、V型12気筒エンジンのノイズがこだまする。1995年のグランプリマシン、フェラーリ412 T2がクオリファイ走行へ挑んでいるかのようだった。

ピットレーンへ出ると、パガーニ・ウアイラ Rが走行していた。桁外れのボリュームは、世界中のサーキットで許される数値を超えているという。静かなエグゾースト・システムも選べるようだが、今回のデモ車両にはストレートパイプが組まれている。

サーキット側も、今回は直管マフラーを許可したという。なんともイタリアらしい。

自然吸気6.0L V12エンジンは850psを発揮

モデル名はウアイラを名乗っているが、公道用モデルと共通する部分は殆どない。フォルムは似ているが、共有部品はドアミラーだけとのこと。

基礎骨格をなすカーボンファイバー製フレームは、FIA(国際自動車連盟)の安全基準を満たした新開発。とはいえ、ファクトリーチームでレースに参戦する予定はない。

パガーニ・ウアイラ R(サーキット専用仕様)
パガーニ・ウアイラ R(サーキット専用仕様)

6.0L V型12気筒エンジンを組み上げたのは、ドイツのHWA社。メルセデスAMGによるフォーミュラEのチーム運営に関わるほか、レーシングマシンも開発している。メルセデス・ベンツが買収しなかった、サーキット専門部隊だ。

パガーニを創業したオラチオ・パガーニ氏は、重量削減とレスポンス向上のために、通常のウアイラが搭載するV12ツインターボからの変更を希望したという。自然吸気となった新ユニットの最高出力は850psで、レブリミットは9000rpmに設定された。

ヒューランド社が製造する6速シーケンシャル・マニュアルを介して、後輪が駆動される。車重は乾燥状態で1050kg。燃料と必要なオイルを加え、ドライバーが座った状態では約1200kgと考えて良いだろう。

デザイナーでもあるオラチオは、プロダクトへのこだわりが強い。細部まで高水準に作り込まれ、小さな部品1つとっても工芸品のよう。削り出されたサスペンション・アームや、ヘッドにパガーニの刻印が入るボルトまで美しい。

繊細なカーボンファイバーの織り目が露出した、ボディのクリア仕上げはオプション。ステアリングホイールは、飛行機の操縦桿のようなヨークタイプが組まれていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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