比類なきV12ディーゼルターボSUV アウディQ7 V12 TDIクワトロへ再試乗 6.0Lで500ps

公開 : 2023.01.21 08:25

最高出力500ps、最大トルク101.7kg-m

大排気量のエンジンは、並外れたトルクを発揮する。ブガッティ・ヴェイロンが1000psと400km/hを達成する必要があったように、最高出力500ps、最大トルク101.7kg-mをドイツ・ヴォルフスブルクの技術者は実現させる必要があった。

Q7は今でも世界で唯一のV12ディーゼルターボを搭載したSUVとして名を刻んでいる。0-100km/h加速は5.5秒でこなし、最高速度は249km/hでリミッターが掛かる。その頃のフォルクスワーゲン・グループは、大きな数字に取り憑かれていた。

アウディQ7 V12 TDIクワトロ(初代/2005〜2014年/英国仕様)
アウディQ7 V12 TDIクワトロ(初代/2005〜2014年/英国仕様)

トランスミッションは6速オートマティック。クワトロで四輪駆動。パワーデリバリーはBEVほど滑らかではないものの、殆どの内燃エンジンでは叶えられない洗練度を備えている。

排出ガス規制に対応するため、アイドリングストップ機能が備わる。それでも、燃費は余り考えない方が良いだろう。メーターパネルには、8.5km/L前後の数字が表示されている。100Lの軽油が安価に購入できた時代なら、受け入れられるものだった。

運転は期待ほどリラックスしたものではない。油圧アシストされるステアリングホイールは重めで、乗り心地はしなやかとはいえない。

英国の舗装の管理状態は酷いが、ドイツのアウトバーンなら平滑。そんな環境なら、ハイスピードでも信じられないほど安定していると感じるはず。

少なくともドライビングポジションは完璧。大排気量ディーゼルが載っていることを考えると、車内で聞こえるノイズも小さい。

羽目を外したような独特の魅力

そして凄まじく速い。V12エンジンの回転が波に乗れば、ひたすらパワーが湧き出てくる。アクセルペダルを傾けている間、249km/hまで勢いよく回転数が高まり、シフトアップが繰り返される。恐らく、まだまだ加速は続くはず。

アウディがカーボンセラミック・ブレーキディスクを標準装備させた理由がわかる。当初、自主規制される前のQ7 V12 TDIの最高速度は283km/hだと主張されていた。この猛烈な勢いを知ると、現実的な数字のようだ。

アウディQ7 V12 TDIクワトロ(初代/2005〜2014年/英国仕様)
アウディQ7 V12 TDIクワトロ(初代/2005〜2014年/英国仕様)

アウディQ7の理想的な利用環境は、ミュンヘンからフランクフルトまで、週末にアウトバーンを疾走するようなスタイルだろう。トレーラーを牽引し、家族と愛犬を乗せて。

最新のアウディRSやBMW M、メルセデスAMGのSUVが提供すべき能力を、今でも持ち合わせている。2012年の試乗レポートは、次のような文章で締めくくられていた。

「激動する時代の中で、羽目を外したような独特の魅力を醸し出しています。ほかのモデルとはまったく異なります」。その頃以上に、2023年では真実味を帯びている。

最近、アルピナの新モデルを運転する機会があった。家族経営でブランドは維持されてきたが、BMWの傘下に収まるという。変化を感じずにはいられない。初代Q7のようなクルマも今のうちに体験しなければ、確かにチャンスは2度と来ないかもしれない。

アウディQ7 V12 TDIクワトロ(初代/2005〜2015年/英国仕様)のスペック

英国価格:15万4175ポンド(新車時)
全長:5085mm
全幅:1985mm
全高:1735mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:5.5秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:2635kg
パワートレイン:V型12気筒5934ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:500ps/3750rpm
最大トルク:101.7kg-m/1750rpm
ギアボックス:6速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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