ラダーフレームにBMWエンジン イネオス・グレナディアへ試乗 目標は最高のオフローダー 後編

公開 : 2023.02.17 08:26

先代ディフェンダーの最新版が目指されたグレナディア。クラシカルな見た目にラダーフレームのオフローダーを、英編集部が評価しました。

気になるワイパーの吹き残しと操舵感

最高のオフローダーが目指された、イネオス・グレナディア。右ハンドル仕様ではオフセットしたペダルレイアウト以上に、見逃せない部分を見つけた。

左ハンドル仕様とワイパーの回転の向きが同じで、フロントガラスの右端に拭き残しのエリアが大きく生まれてしまうのだ。Aピラーも太く、悪天候時は特に、右斜め前方の視界が制限されるだろう。

イネオス・グレナディア・ステーションワゴン 3.0TD トレイルマスター・エディション(英国仕様)
イネオス・グレナディア・ステーションワゴン 3.0TD トレイルマスター・エディション(英国仕様)

視認性は安全性に直結するため、価格を抜きにして改善するべきだと思う。変換コストも、そこまで高額にはならないのではないだろうか。歩行者や自転車用に、優しくクラクションを鳴らす機能も備えるなど、細部まで気は配られているのだが。

素晴らしい中に惜しい欠点が含まれるような印象は、実際の走りにも続く。とりわけ、Gクラスディフェンダーを運転したことのないドライバーは、グレナディアの操舵感へ戸惑うに違いない。

本格的なオフローダーとして、グレナディアは肉厚なオールテレーン・タイヤを履く。そこにクラシカルなボールナット式のステアリングラックが組み合わさリ、スローなレシオと相まって、ステアリングホイールの操作が絶え間なく求められる。

直進状態でも、滑らかな路面でも、腕を動かし続ける必要がある。ロックトゥロックは3.85回転。セルフセンタリング性も弱い。少なくとも慣れるまでの数kmは、グレナディアが進む向きへ集中しなければならない。

オフロードでの操舵感や、回す軽さを求めた設定の代償とはいえる。それでも、もう少し落ち着いていて欲しい。パワーステアリングは油圧式だ。

静かな車内 BMW由来の好印象なエンジン

サスペンションはしなやかにストロークし、アスファルトが剥がれた穴を滑らかに吸収してくれる。グリップ力は充分で、ボディロールは控えめ。カーブへの侵入速度が速すぎた場合は、穏やかなアンダーステアで教えてくれる。

とはいえ、車重が2.8tもあるラダーフレームのオフローダーだから、動的なバランスが高いわけではない。カーブの続く一般道をハイペースで走らせることは、ちょっとした挑戦といえる。ある程度の充足感は得られるけれど。

イネオス・グレナディア・ステーションワゴン 3.0TD トレイルマスター・エディション(英国仕様)
イネオス・グレナディア・ステーションワゴン 3.0TD トレイルマスター・エディション(英国仕様)

グレナディアで洗練されていると感じるのは、車内の静けさ。四角いボディ形状にも関わらず、高速道路の速度域でも風切り音は殆ど聞こえてこなかった。うっすら、ZF社製の8速オートマティックやトランスファーの唸りが響く程度だ。

エンジンはBMW由来の3.0L直列6気筒ターボで、試乗した最大トルク56.0kg-mのディーゼルの他に、45.8kg-mのガソリンも選べる。とても滑らかに回転し、上質な印象を与えてくれる。

回転域を問わず、どちらもパワーにはゆとりがあり、スムーズに余裕の加速を引き出せる。太いトルクを生み出すディーゼルの方が扱いやすく、燃費は7.8km/Lと比較すれば勝る。ガソリンは5.3km/Lへ落ちるが、質感としてはより魅力的ではある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジム・ホルダー

    Jim Holder

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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