MC20由来のV6ツインターボ マセラティ・グラントゥーリズモへ試乗 芳醇な伝統が香る 後編

公開 : 2023.02.16 08:26

ミドシップ・スーパーカー、MC20譲りのV6ツインターボを獲得した新型。英国編集部が完成度を確かめました。

V8エンジンの音響体験には届かない

3.0L V型6気筒ツインターボ・エンジンを搭載する、新しいマセラティ・グラントゥーリズモ。無論、圧倒されるほどパワフルで、スーパーカー譲りの強心臓だと実感できる。

ステアリングホイール上のセレクターで、スポーツかコルサ(レース)のドライブモード選択すれば、排気システムのバルブが開放され、アフターファイヤーのグズりや破裂音が増大する。それでも、鳥肌が立つようなV8エンジンの音響体験には届かない。

マセラティ・グラントゥーリズモ・トロフェオ(欧州仕様)
マセラティ・グラントゥーリズモ・トロフェオ(欧州仕様)

グラントゥーリズモの印象を、大幅に下げるほどではない。とはいえ、伝統のマセラティに期待される、聴覚面での充足感が減じられたことを寂しく思うのは、筆者だけではないだろう。

8速オートマティックの変速は、即時的で滑らか。ソフトウエア任せでも、ドライバーがパドルを引くマニュアルモードでも、印象はとてもポジティブだった。

ステアリングは、手のひらへ伝わるフィードバックが薄いものの、反応は正確で素早い。トラクションは、四輪駆動らしく極めて高次元。試乗車が履いていたスタッドレスタイヤでも、かなり積極的なターンインを披露していた。

コーナリング時は、ドライバーの腰の付近を軸に旋回していくような、シャシーマナーが好ましい。前後アクスルにかかる荷重も、バランスが取れている印象だった。

グランドツアラーとしての能力は確実に高い

タイトコーナーの出口でアクセルペダルを蹴飛ばせば、ターボブーストが高まり、66.1kg-mという大トルクが発生。リア側へ主軸が振られた四輪駆動システムが機能し、右足でのライン調整も難しくない。

ブレーキは、効きはじめの食付きが若干シャープかもしれない。それ以降は、漸進的に強力な制動力が立ち上がっていた。

マセラティ・グラントゥーリズモ・トロフェオ(欧州仕様)
マセラティ・グラントゥーリズモ・トロフェオ(欧州仕様)

乗り心地は、スポーツやコルサ・モードではかなり硬め。ダンパーは引き締まり、ボディの動きを確実に抑制する。一方で、コンフォート・モードを選べば穏やかに一変。しなやかで流暢に路面の不正をいなし、長距離ドライブも心地よくこなせるだろう。

ただし、鋭い入力に対する処理は少々苦手な様子。強めに生じる衝撃とともに、サスペンションからは小さくノイズも聞こえてきていた。車内の遮音性は、基本的には驚くほど高いのだが。

その名の通り、グランドツアラーとしての能力は間違いなく高い。運転席からの優れた視認性も、快適なドライビング体験に大きく貢献している。不規則にカーブが連続する区間でも、全長5m、全幅2mの大きなボディを不安感なく車線の中央へ導いていける。

比較するなら、ポルシェ911 ターボほどの爽快さは得られないかもしれない。だが、ベントレー・コンチネンタルGTより身軽で、アストン マーティンDB11より従順といえそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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