エンジンを使い続けるモータースポーツ 心をくすぐるポルシェのV8ハイブリッド

公開 : 2023.02.21 06:25

電動化が進む昨今、自動車レースではエンジンの話題が尽きません。ポルシェ最新のLMDhマシン「968」では、かの918から派生した4.6L V8ハイブリッドを搭載しています。

胸が熱くなるV8ハイブリッド

EV(電気自動車)の普及が叫ばれているが、モータースポーツの世界では、内燃機関に関する興味深い話題はまだまだたくさんある。

ガソリンマニアなら、ポルシェの最新マシン、最高出力680psのV8ハイブリッド「963」を見れば、自動車レースにあまり興味がない人でも胸が熱くなるに違いない。

ターボはオランダのメーカー、ヴァン・デア・リー社の製品で、0.3barの圧力で作動する。
ターボはオランダのメーカー、ヴァン・デア・リー社の製品で、0.3barの圧力で作動する。

簡単に説明すると、ポルシェ963はLMDhと呼ばれる規格のレーシングカーであり、FIA世界耐久選手権(通称WEC。ル・マン24時間もこの一部)と北米のIMSAスポーツカー選手権(デイトナ24時間など)の両方に参戦することができる。

LMDh(ル・マン・デイトナ・ハイブリッド)は、ル・マン・ハイパーカー(LMH)と並んで、最高レベルのレースのために作られた、それ以外の何物でもない完全なレーシングスポーツカー規格である。

LMP2シャシー(LMP2は耐久レースの第2階級)を使用し、IMSAシリーズのGTPクラスとWECのハイパーカー・クラスに適合している。

963に搭載されるエンジンは、公道向けスーパーカーであるポルシェ918スパイダーから派生した4593cc V8ターボだ。このエンジンは10年前に発表されたものだが、今でも強豪相手の耐久レースにふさわしい、あらゆる資格を備えた強力なユニットである。

テストでは耐久性があることが証明されており、フラットプレーンクランクと高回転を可能にするショートストロークを採用した。また、ドライサンプを採用することで搭載位置を低く抑え、低重心化とサスペンションのピックアップポイントの最適な配置を実現している。

オランダのターボチャージャーのスペシャリスト、ヴァン・デア・リー社のターボチャージャーが搭載され、0.3barという低圧で作動する。最大ブースト圧が低いため立ち上がりが早く、タイムラグも少なく、自然吸気が持つ本質的な特性が残っている。

エンジンの約80%はオリジナルの918スパイダーから派生したもので、シャシーの構造部品として機能させるための強化が加えられている。

LMDhレギュレーションでは当初、ハイブリッド・パワートレインを各チームが独自に開発できるようにする予定だったが、最終的にはコスト削減と競争力維持のため、サプライヤーを利用することとなった。

800V、1.35kWhの小型バッテリーをオックスフォードに本社を置くWAEテクノロジーズ社、エンジンとエクストラック製7速シーケンシャル・トランスミッションの間に位置するモーター・ジェネレーター・ユニット(MGU)とそれに付随する電子機器をボッシュが供給している。

MGUは後輪のみを駆動し、40psから68psの出力で短時間のみ作動する。最大出力時には、エンジンと合わせて680psを生み出すことが可能だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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