ロータリーの圧縮比は要確認 マツダRX-8 英国版中古車ガイド 観音開きのサイドドア

公開 : 2023.04.22 08:25

美しいクーペボディに4シーターの実用性、白眉のロータリーエンジンを融合させたRX-8。英編集部が中古車で魅力を再確認します。

ドライバーを魅了するロータリー・スポーツ

美しいスタイリングで身を包み、ドライバーを魅了する操縦性を備えたスポーツカーが、英国では2000ポンド(約32万円)程度の価格から探せる。しかも、8300rpmまで吹け上がるロータリーエンジンを積んだ、4シーター・モデルを。

マツダRX-8は、英国では驚くほど低い価格帯で取り引きされている。ただし、それには訳がある。

マツダRX-8(2003〜2012年/英国仕様)
マツダRX-8(2003〜2012年/英国仕様)

RX-8は素晴らしいスポーツカーだ。低く短いボンネットには、1.3Lのツインローター・ロータリーエンジンが収められ、英国仕様では200psと230psという2段階の最高出力が設けられていた。

200ps版でも不足なく速い楽しいが、230ps版なら0-100km/h加速を6.4秒でこなし、最高速度は234km/hに届いた。エンジンはコンパクトで、コクピット側の低い位置へ搭載することで、50:50の前後重量配分を叶えていた。

トランスミッションは、出力の低い方では5速、高い方には6速のマニュアルを設定。リミテッドスリップ・デフを介して、リアアクスルを駆動した。サスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン式で、リアがマルチリンク式となる。

車重も軽く、腕利きのドライバーはシャープなステアリングと懐の深いシャシーを堪能できた。加えてリアドアが備わり、一家でのドライブすら楽しめた。

リアシート側の空間は少々狭いものの、子供なら充分。着座位置は低く、インテリアの仕立ても悪くなく、高い訴求力を備えていた。

耐久性や経済性が現在の価値に影を落とす

RX-8は2008年にマイナーチェンジし、ボディ剛性が向上。スタイリングに手が加えられ、ビルシュタイン・ダンパーを獲得し、サスペンションは若干タイトに。ギア比がショート化され、エンジンもトルクアップ。動力性能が高められている。

その2年後、2010年に英国では販売が終了。RX-8の生産は2012年まで続いている。

マツダRX-8(2003〜2012年/英国仕様)
マツダRX-8(2003〜2012年/英国仕様)

ただし、大きな魅力を生んでいるロータリーエンジンは完璧ではない。燃費は褒めにくく、日常的な条件では7.0km/L前後と考えていい。エンジンオイルの消費量も多い。

低回転域ではトルクが細いことも、覚えておきたい。大人4名で市街地を走っていると、ハンドブレーキを掛けたままかと勘違いするほど、出だしはもたつく。

甘美に回るローターは、内部の圧縮比を維持するシール構造が摩耗しやすい。ロータリーエンジンの耐久性や経済性が、現在の価値に影を落としている。とはいえ、個性的な内燃ユニットとして、クルマ好きを惹き付ける存在であることも事実だ。

NSU Ro80やシトロエンGS Biなど、ロータリーエンジンを搭載したモデルは他社にも存在した。だが、現在まで生き残らなかった理由は、トラブルに依るところが大きい。

とはいえ、冒険してみるのも悪くないだろう。購入前に整備記録と圧縮比を確認すれば、ハズレを引く可能性は減る。走行距離は短い方が安心だ。

試乗で不自然な印象だったり馬力が足りないと感じたら、違う車両を探したい。ガソリンとエンジンオイルのために、多めのお小遣いも確保しておきたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ピアソン

    Mark Pearson

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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