DS7 詳細データテスト パフォーマンスはまずまず ハンドリングもそこそこ EV走行はかなり快適

公開 : 2023.05.06 20:25  更新 : 2023.06.09 15:10

走り ★★★★★☆☆☆☆☆

DS7 360のようなPHEVを取り扱うとき、ひとくくりにパフォーマンスを語るのは難しい。量的にも性質的にも、シチュエーションや選択した走行モード、充電量によってきわめて大きな違いが出るからだ。

ベストな状態、そう、フル充電でエンジンもモーターも同時に全力を使える状態なら、360psを存分に味わえる。発進はわずかにグズるが、そこから力が増していき、シートへと強く押し付けられる感覚が得られる。0-100km/hが5.6秒という公称値には届かなかったが、それでも6秒ジャストというのは十分な速さだ。

フル充電でフルパワーを発揮すれば動力性能は高いが、パフォーマンスカーと呼ぶような性質のものとは異なる。トランスミッションの制御には、操縦性を損なうところがあった。
フル充電でフルパワーを発揮すれば動力性能は高いが、パフォーマンスカーと呼ぶような性質のものとは異なる。トランスミッションの制御には、操縦性を損なうところがあった。    LUC LACEY

しかしながら、公道上でならほとんどの場合、パワフルなエンジンを積むラグジュアリーSUVで得られるプレジャーは、必ずしも0-100km/h最速だけにあるわけではなくて、元気な加速を楽にできる余力があることにも拠るところが大きい。それに関してPHEV、とくにこのDS7は、期待したほどではないかもしれない。

前後モーターの合計出力が、単純計算で223psもあれば、ソフトウェアはなによりスムースで静謐な走りを重視してプログラムされているのだろうと予想するのではないだろうか。ところが、ゆったりとはいえない加速を求めると、コンフォートとハイブリッドの各モードでは、エンジンが走り出しとしてはあまりにも激しく回りすぎてしまう。

中回転域で、力強く、ただしドラマティックさを極力抑えた加速をしようと思ったら、意外にもスポーツモードを選ぶほうがうまくいく。しかし、そうするとサスペンションは硬くなり、エンジンに鞭を入れると高回転を保つ時間が長くなりすぎる。

それならば、シフトパドルを使って、おかしな変速プログラムのソフトウェアからコントロールを奪えばいいと思うだろう。ところが、トランスミッションをマニュアルモードに固定できないので、すぐにクルマが主導権を取り返し、望まないタイミングでのシフトアップやシフトダウンをしはじめるのだ。そのせいで、各ギア毎の加速性能を計測することができなかった。

このパワートレインの欠点を乗りこなすことはできるが、乗って気持ちいいトルクの波を見つけるのが、こんなに厄介でいいはずがない。同じく、1.6Lターボは回してもさほどエキサイティングというわけではなく、サウンドは控えめで、プッシュしてもそれほど回りたがるわけではない。

われわれは、DSの今後の電動化に期待している。というのも、DS7はおそらくエレクトリックモードでの走りがもっともリラックスしているからだ。これは静けさと、リニアな加速レスポンスのおかげだ。EV走行での0−97km/h加速は10.4秒で、パフォーマンスカーらしさはない。

DS7 360はパワーが高められているだけでなく、パフォーマンス仕様らしくフロントブレーキが強化されている。ただし、113km/hからの制動距離が45.0mというのは、2018年に計測したDS7クロスバック・ピュアテック225より1.5m短いのみだ。

それでも、これはなかなかストロングで、アウディSQ5スポーツバックを凌ぐ。ペダルフィールはステランティスのクルマの弱点になりがちで、DS7のペダルも理想よりソフトだが、少なくとも調整はイージーで、スムースな停止を可能にする。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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