異次元にスリリング スパルタンモーター・スパルタン ホンダ K24型から466ps 後編

公開 : 2023.05.24 08:26

自らスパルタンを名乗る、情熱的なドライバーズカーへ英国編集部が試乗。異次元のドライビング体験に圧倒されたようです。

精鋭の技術者たちが開発へ関与

スパルタンのシャシー開発へ力を貸したのが、アンドレ・ナデル氏。オーストラリアで開催される、バサースト12時間レースへ出場するマシンなどを手掛ける人物だ。

滑らかなボディの空気力学には、トヨタとウイリアムズのF1チームに加わっていた、サミー・ディアシノス氏が協力した。大きなウイングとスプリッター、ディフューザーなどで、運転のしやすささと挙動の漸進性を高め、速さを追求している。

スパルタンモーター・スパルタン・プロトタイプ
スパルタンモーター・スパルタン・プロトタイプ

スパルタンに施された空力パーツによって、ダウンフォースは最大800kgまで高めることが可能だとのこと。しかし、あえて470kgへ制限されている。サーキットでのラップタイムを最短にするために。

シャシー調整には、バートン・マワー氏も関わっている。もとF3カテゴリーのレーシングドライバーで、ヨコハマ・タイヤのテストドライバーを務めた過去もある。その経験を活かし、ロールセンターやキャンバー角、トー角などをバランスさせた。

トラクティブ社製サスペンションの減衰力についても、アドバイスしている。スパルタンモーター社のピーター・パップ氏によれば、このクルマで最も特別なアイテムだという。

コクピットに7軸の加速計が搭載され、1ミリ秒単位でダンパーを個々に調整。アンチロールバーがなくても、完璧といえる姿勢制御を実現させている。量産版では、ウェットからレースまで5段階のモードを得る予定らしい。

ホンダのK24型4気筒を過給し466ps

かくして、完成したスパルタン・プロトタイプがアングルシー・サーキットにある。その走りは、ここ数年で最も楽しいといえる体験の1つになった。

シャシーは軽く、パワーアシストのないステアリングはダイレクト。回頭性は鋭くリニアで、思い切り振り回してテールを流すことも造作ない。アリエル・アトムとケータハム・セブンの、間の子のように。

スパルタンモーター・スパルタン・プロトタイプ
スパルタンモーター・スパルタン・プロトタイプ

セミスリックのヨコハマ・アドバンA050タイヤを履くから、トラクションは常に充分以上。トレッド面が温まるにつれて、当初は若干アンダーステア傾向だった特性が、ニュートラルへ転じていく。

能力が高いが故に、ドライバーがリカバリーを加えていくような領域へ届くには、相当に攻め込む必要がある。しかし、そこで驚くような変化が待っているわけではない。クワイフ社製のリミテッドスリップ・デフが、より本気で仕事をし始める程度だ。

こんな崇高な体験の一翼を担っているのが、見事なパワートレイン。エンジンは、ホンダのK24型という2.4L直列4気筒をベースにしているが、大々的なチューニングが施されている。スーパーチャージャーが組まれ、466psを許容する信頼性も得ている。

「試作段階では、568psまで増強させていました。かなり活発なエンジンですよ。すごく面白い」。ピーターがにこやかに話す。島国の英国より、オーストラリアの方が活発と呼ぶ時の水準は高い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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