4949ccか5752ccか フォード・マスタング ボス302とマッハ1 規制前夜のポニーカー 後編

公開 : 2023.06.04 07:06

レース参戦規定を満たすべく作られたボス302と、より穏やかなマッハ1。レアな2台のポニーカーを英国編集部がご紹介します。

351cu.inでファストバックのみのマッハ1

1969年から1970年の間にフォードマスタングを検討していたら、ボス302より親しみやすい、ホモロゲーション仕様以外へ惹かれても当然だろう。1969年までは、390GTという選択肢が用意されていた。

しかし、GTという響きに特別さは薄かった。シボレーポンティアックの競合モデルに並ぶほどの性能も、備わっていなかった。そこで追加されたのが、マッハ1だ。1969年のコンセプトカー、レバカール・マッハ1が、名前の由来になっている。

フォード・マスタング・マッハ1(T5/1969〜1970年/北米仕様)
フォード・マスタング・マッハ1(T5/1969〜1970年/北米仕様)

ボディはボス302と同様に、ファストバックのスポーツルーフのみ。価格は3271ドルとお手頃な設定ながら、中身はゴージャスなものだった。

マットブラックに塗られたボンネットには、ギミックだが、シェーカー・スクープを装備。ナスカーを模したボンネットピンが与えられ、ボディ・サイドとリアには専用ストライプが貼られた。

ステアリングホイールは専用アイテム。ハイバックのバケットシートが組まれ、フェイクウッドのトリムが車内の雰囲気を高めた。

V8エンジンは、2バレル・キャブレターが載った、351cu.in(5752cc)のウインザー・ユニットが当初の標準。オプションで4バレル・キャブレターを組めたほか、390cu.in(6390cc)や428cu.in(7013cc)のビッグブロックも提供された。

リアデフはオープンで、トランスミッションは3速マニュアル。その後、4速マニュアル
へアップデートされ、3速オートマティックとリミテッドスリップ・デフも選べるようになっている。

最高出力253ps 最大トルク48.9kg-m

今回ご登場願ったレッドのマッハ1は、モデルイヤーとしては1970年式。その時点でウインザー・ユニットからクリーブランド・ユニットへ変更されており、マスタング・ボス308と同じ、高性能なヘッドも獲得している。

多くの例と同様に、このマッハ1にもオプションがふんだんに指定されている。しかし、エンジンはオリジナルの2バレル・キャブレターのまま。最高出力253ps/5400rpmと最大トルク48.9kg-m/3400rpmを発揮する。

オレンジのレッドのフォード・マスタング・ボス302と、フォード・マスタング・マッハ1
オレンジのレッドのフォード・マスタング・ボス302と、フォード・マスタング・マッハ1

ステアリングにはパワーアシストが装備され、トランスミッションは3速オートマティック。オープンデフということもあり、シリアスなボス302と比較して、おおらかなアメリカン・ドライブとの相性が良い。

2009年に当時で7万5000ドルという大金が投じられ、完璧な状態へレストアされている。2017年に英国へ輸入されたという。

2023年にステアリングホイールを握ってみても、ボディは大きく感じられる。シェーカー・スクープが、前方視界で存在感を放つ。リアピラーが太く、斜め後方の視界は良くない。それでも、狭い英国の一般道でもフロントノーズを導きやすい。

ダッシュボードのデザインは左右対称。助手席側には、時計とモデル名のエンブレムが並ぶ。運転席側にはスピードメーターのほかに、油圧、電圧、燃料計などの補助メーターがずらり。オプションのタコメーターは、この例には備わらない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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