高騰する欧州のエネルギーコスト BMW iX 長期テスト(9) 気温で左右される充電速度

公開 : 2023.06.25 09:45

エンジンを売りにする上級ブランドが発売した、フラッグシップBEVのiX。英国編集部が長期テストで実力を検証します。

積算1万4464km エネルギーコストの高騰に驚く

同僚へ貸していた長期テストBMW iXが戻り、筆者は仕事のためベルギーへ向かった。1週間弱で走った距離は約1300km。似たルートをディーゼルエンジンのBMW X5で走行した経験があるが、エネルギーコストの高騰に驚かされることになった。

まず復路で利用したのは、ドーバー海峡を抜けるユーロトンネルの入り口。クルマで渡るには車載列車へ積む必要があるのだが、待ち時間に利用できる急速充電器は、ありがたいことに無料。短時間で、駆動用バッテリーを回復できる点も魅力だ。

BMW iX xドライブ50 Mスポーツ(英国仕様)
BMW iX xドライブ50 Mスポーツ(英国仕様)

最初の夜を過ごしたのは、ベルギーの北西に位置するブルージュ。トンネルを抜けてから320km程走り、15%まで減っていた充電量を100%へ戻した。

利用料金は、1kWh当たり0.75ポンド(約131円)。半年前は0.4ポンド(約70円)だったから、倍近く電気代が値上がりしたことになる。

利用したのは、アレゴ社の充電ステーション。高速道路のサービスエリアにある施設は、さらに割高だから仕方ない。それでもベルギーでの3泊で、充電に100ポンド(約1万7500円)近く支払うことになった。

復路はブリュッセルからのスタートで、グレートブリテン島の自宅までは約480km。途中のフランスで、さらに充電する必要があった。

1300kmの移動に要した電気代は3万5000円

往路と同様、ユーロトンネルを渡る車載列車を待つ間に、フランス・カレーのターミナル駅へ設置されているテスラ社のスーパーチャージャーを利用した。現在は、テスラ以外のバッテリーEVでも利用できるよう開放されている。

同じ場所には2022年以降、テスラ以外の急速充電器も敷設されている。しかし、他社の急速充電器は非接触型支払いサービスに対応しておらず、結局スーパーチャージャーへ繋ぐことになった。

BMW iX xドライブ50 Mスポーツ(英国仕様)
BMW iX xドライブ50 Mスポーツ(英国仕様)

ところが、充電開始から10分足らずでケーブルが加熱。充電不可というエラーメッセージが表示され、中断を余儀なくされた。

筆者はこれまで複数のバッテリーEVへ乗った経験を持つが、この状況は初めて。別の充電器で試しても同様のエラーが表示されたため、BMW iX側の不調だろうと判断。ひとまずクルマを車載列車に積み、ユーロトンネルを抜け、英国側で充電を試みることにした。

理由は不明だが、グレートブリテン島では無事に充電が完了。最後に自宅で駆動用バッテリーを満たし、約1300kmの移動でかかった電気代は約200ポンド(約3万5000円)となった。

同じ距離をディーゼルエンジンのBMW X5で走らせたら、14.0km/L程度の燃費で、155ポンド(約2万7000円)ほどの軽油代になるだろう。なかなか小さくない違いといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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