圧巻の走りはサルーンへ肉薄 BMW M3 CSツーリング(2) 他ブランドが設定しない不思議

公開 : 2025.08.12 19:10

カーボン製ボンネットにゴールド・ホイール、+20psと専用サスで強化されたM3 ツーリング 走りの印象はサルーンへ肉薄 段違いのグリップ力 カーブでの安定感 万能選手へUK編集部が試乗

走りの印象はサルーンのM3へ肉薄

BMW M3 CSツーリングは、基本的にはサルーンのM3 CSのステーションワゴン。今回は、グレートブリテン島南部のスラクストン・サーキットと、周辺の一般道での試乗となったが、走りの印象はかなり近い。使い勝手では勝るのに。

3.0L直6ツインターボエンジンは、極めてパワフル。サーキットでコーナーへ飛び込むと、荷室の質量がボディ後方で作用するのを感じる。とはいえ、僅かな違いでしかない。

BMW M3 CSツーリング(英国仕様)
BMW M3 CSツーリング(英国仕様)

それ以上に、3シリーズ・ツーリング同等の実用性はそのままに、コース上で驚くほどの自信を与えることへ言葉を失う。ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2 タイヤのグリップ力と、素晴らしいシャシーバランスが、圧巻の戦闘力を披露する。

高速コーナーでも、安定性は秀抜。カーボンセラミック製のブレーキディスクは、遅めのブレーキングにも余裕で対応。迅速な周回を重ねられる。

自然にドライバーを補助する電子システム

サスペンションは専用チューニング。スプリングはCSとして引き締められ、リンクのボールジョイント部分が増やされ、可動特性は異なるという。ステアリングやスタビリティ・コントロールも同様だ。

ダンパーは、コンフォートかスポーツ、スポーツプラスの3段階に調整可能。ただし、1番最後のモードはサーキットでもハード過ぎる。凹凸や縁石での跳ねを考慮すると、スポーツ・モードが望ましい。

BMW M3 CSツーリング(英国仕様)
BMW M3 CSツーリング(英国仕様)

四輪駆動を含む電子制御システムは、乗り手の運転技術へ合わせて、多様にレベルを調整可能。最も積極な介入状態でも、自然にドライバーを補助してくれる。

通常のM3のように、後輪駆動モードへの変更もできる。流石に、550psを2本のパイロットスポーツ・カップ2では受け止めきれないが。前後のブレーキバランスは巧妙で、豪快なテールスライドも誘いやすい。

段違いのグリップ力 カーブでの安定感

一般道は、パイロットスポーツ4Sで走らせた。乗り心地と静寂性は、通常のM3 ツーリングに及ばずとも、グリップ力は段違い。ステアリングの頼もしさも上昇している。

四輪駆動システムを4WDスポーツ・モードへ切り替えても、グリップ力が生む安定感は揺るぎない。テールを振り出すことなく、極めて高速に進もうとする。長い直線では有能な6気筒ツインターボが威力を見せつけ、遅いクルマの追い越しは瞬間で終わる。

BMW M3 CSツーリング(英国仕様)
BMW M3 CSツーリング(英国仕様)

排気音は、従来のようにソウルフルとはいえないものの、迫力は常時不満なし。高域へ引っ張れば、相当なボリュームに達する。騒音規制のあるサーキットでは、バルブを閉じる必要があったほど。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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