運転の楽しさと800km超の航続距離実現へ BMW新型『i3』 来年登場、3シリーズ初のEV版

公開 : 2025.10.21 06:45

新型BMW i3は「純粋な運転の喜び」と800km以上の航続距離の実現を目指し、次世代プラットフォームと高度な車両制御システムを採用。新しいデザイン言語も導入し、テスラや中国ブランドに対抗します。

EV時代を支える主力セダン

BMWの新型『i3』が来年、歴代3シリーズ初のフル電動モデル(EV)として登場する。航続距離は800km以上を誇り、同社CEOのオリバー・ツィプセ氏は「ピュアなドライビング・プレジャー」を実現すると述べている。

新型i3は、2023年に初公開されたコンセプトカー『ビジョン・ノイエ・クラッセ』と似たデザインを採用する。次世代モデル群のノイエ・クラッセファミリー初のセダンとなり、先日発表されたSUV『iX3』と同じEV専用のGen6プラットフォームを採用する。

BMW『i3』のプロトタイプ(カモフラージュ)
BMW『i3』のプロトタイプ(カモフラージュ)

BMWは2027年末までにラインナップを刷新し、40車種の新型EVと内燃機関車を展開する計画だ。これらすべてがノイエ・クラッセのデザイン言語を共有することになる。

現在、BMWのベストセラー車はX3だが、3シリーズも依然としてブランドの基幹となっている。そして、今回初めてEV版が導入される。BMWは2021年から同サイズの4ドア・クーペ『i4』を販売しているが、EV技術のさらなる成長を待って、3シリーズの電動化に踏み切った形だ。

i3はまったく新しいモデルだが、すでによく知られたお馴染みのライバルと対峙することになる。メルセデス・ベンツCクラスのEV版が来年発売予定で、アウディA4のEVも開発中だ。一方、米国のテスラに加え、BYD傘下のデンツァやシャオペンといった中国の新しい高級ブランドにも対抗しなければならない。

i3には、高性能の電動版M3など多様な出力バリエーションが用意される予定だ。先手を切るのはiX3と同様に『i3 50 xドライブ』となる見込みで、108kWhのニッケル・マンガン・コバルト(NMC)バッテリーとデュアルモーター構成により合計出力470ps、最大トルク66.2kg-mを発揮するだろう。

iX3はこの構成で最大805kmの航続距離を実現している。空力特性に優れたセダン形状により、i3はさらに優れた数値を達成する可能性が高く、ライバルのCクラスEV(情報によれば航続距離は約800km)に対して優位性を示すだろう。i3に採用されたGen6プラットフォームは800Vアーキテクチャーを採用しており、最大400kWの充電速度を可能にする。

先進技術で運転を楽しく

i3に加え、現行型に大幅改良を施したガソリンエンジン搭載の3シリーズも登場する。引き続きCLARプラットフォームを使用するが、ノイエ・クラッセのデザイン言語と最新の車載技術が導入される。

ノイエ・クラッセのデザイン言語を示すのが、コンセプトカー『ビジョン・ノイエ・クラッセ』であり、BMWのキドニーグリルを独自解釈したデザインが採用されている。このグリルデザインはiX3や今後のSUVにも継承される。最近公開されたi3のプロトタイプからは、3シリーズ特有のボディ形状を維持しつつ、より滑らかなラインとCピラーのホフマイスターキンクを採用していることがわかる。

i3との共通化が見込まれるSUV『iX3』のインテリア
i3との共通化が見込まれるSUV『iX3』のインテリア    BMW

インテリアでは、iX3にも搭載されている新型の『パノラミックiドライブ』システムを採用する。これはタッチスクリーンとフロントガラス全長に投影されるヘッドアップディスプレイを組み合わせたものだ。BMWは、このパノラミックiドライブにより主要情報をドライバーの視線に近い位置に表示できるとしている。

BMWにとって重要なのが走行性能であり、i3とガソリン仕様の3シリーズが同等の乗り心地とハンドリングを実現できるよう重点的に取り組んでいる。その鍵となるのが、新しい集中型コンピューターだ。ここに『ハート・オブ・ジョイ』と呼ばれる車両制御システムが搭載され、迅速かつ直感的なレスポンスを可能にするという。

ハート・オブ・ジョイはブレーキとエネルギー回生システムを実質的に統合し、自動調整することで高い制動力を発揮する。BMWによれば、減速の98%をエネルギー回生システムで行うことができるという。

BMWグループのデザイン責任者エイドリアン・ファン・ホーイドンク氏は、セダンに続いて、ステーションワゴンのツーリングも登場予定であると認めている。

その後、歴代初の電動版M3が2028年に登場予定で、すでにプロトタイプによるテスト走行が始まっている。同車もハート・オブ・ジョイを採用するが、M部門責任者フランク・ファン・ミール氏は以前AUTOCARに対し、専用設計の電動パワートレインとバッテリーコンポーネントを使用すると明言している。各コンポーネントはBMWの標準部品をベースとしつつ、Mパフォーマンス部門による大幅な改良が施されるようだ。

電動版M3は4モーター構成を採用すると予想され、新しい制御ソフトウェアによる高度なトルクベクタリングを駆使することで、史上最強のMモデルとなる可能性がある。

なお、i3という名称は以前、先駆的で斬新なデザインのハッチバックに用いられていた。同車は2013年から2022年まで、レンジエクステンダー仕様と純EV仕様が販売されていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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