ゼロヨン加速はフェラーリ348t超え GMCサイクロンとタイフーン 世界最速トラック 後編

公開 : 2023.07.23 07:06

0-97km/h加速は5.3秒 広く豪華なレザー内装

タイフーンは、シボレー・ブレイザーの兄弟モデル、GMCジミーがベース。Bピラーより前のボディはサイクロンと同一で、4.3L V6ターボエンジンや四輪駆動のパワートレインも共有していた。

特徴といえたのが、広く豪華なレザー内装。大人4名がゆったり乗れるワゴンボディをまとい、車重は1632kgから1734kgへ増えながらも、0-97km/h加速は5.3秒と不満ない俊足を発揮した。

全長は4674mmで、サイクロンの4585mmから伸ばされていたが、ホイールベースは2552mmと約200mmも短縮。より敏捷な身のこなしを実現していた。

さらに、リアの車高を水平に維持する機能を備え、最大積載量は408kg。ピックアップトラックのサイクロンの倍近い荷物を運べ、実用性は増しており、最終的に1992年から1993年までに4697台が生産されている。

今日、ホワイトのサイクロンを持ち込んでいただいたのは、タイフーンと同じマーカス・ホーカー氏。新車時に日本で販売された車両で、フェンダーにはウインカーが追加されている。

インテリアでは、ステアリングホイールが4スポークであることが、タイフーンとの違い。ドアミラーの角度調整が手元でできるようになっているが、それ以外は基本的に変わらない。

フロントシートは、あと10cmほど後方へスライドできると、身長190cm近い筆者にとっては快適だろう。2ドアだから、リアシートへは体を屈めて出入りする。両側に大きめの小物入れが設えられ、ベンチシートながら定員は4名となる。

熱とトルクがエンジンマウントへ与える負荷

サイクロンからタイフーンへ乗り換えると、増えたボディの大きさへ真っ先に気づく。加速力はチューニングカー的に鋭いものの、背筋がゾクゾクする印象は小さい。内装が上質に仕立てられているためか、聴覚的なドラマチックさも小さい。

今回のタイフーンの場合、速度域に関わらずエンジンから明確な振動が車内へ響く。ゴム製のエンジンマウントが短期間で完全に潰れたため、今後の整備も考え、V6エンジンをシャシーへダイレクトに載せるという手段をマーカスが選んだためだ。

GMCタイフーン(1992〜1993年/北米仕様)
GMCタイフーン(1992〜1993年/北米仕様)

ターボが発する大量の熱と、増大したトルクが生むストレスが、マウントへ過大な負荷を与えると彼は考えている。外注先のプロダクション・オートモーティブ・サービシーズ(PAS)社によって、低予算・短期間に仕上げられた事実が影響しているのだろう。

確かに、シャシーのチューニングはパワートレインと比べて充分ではなく、弱点といえる部分が含まれている。しかし、サイクロンとタイフーンの2台が誕生したことを、筆者は改めて高く評価したい。

GMという大企業が、薄利でも過激なモデルを生み出そうと20世紀末に挑戦した事実が、何より素晴らしい。そして外部の力を借りて完成した2台は、今でもわれわれの気持ちを刺激してくれるのだから。

協力:マーカス・ホーカー氏、マーク・エドワーズ氏

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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