ゼロヨン加速はフェラーリ348t超え GMCサイクロンとタイフーン 世界最速トラック 前編

公開 : 2023.07.23 07:05

V6ターボを搭載した俊足ピックアップのサイクロンと、SUVのタイフーン。生産数1000台に留まった2台を英編集部がご紹介します。

ドラッグレースでフェラーリ348tに勝利

アメリカのトラックメーカー、GMCが1991年に打ったピックアップトラックの広告には、こんなキャッチコピーが載っていた。「本当にモノを運べる、ポルシェ911だと考えて」と。

間違いなく、カタチはスーパーやホームセンターでの買い物に活躍するであろう、シングルキャブのピックアップトラック。だが、大径ホイールに薄いタイヤを履き、車高は低く、オフロードが得意なクルマには見えなかった。

GMCサイクロン(1991年/北米仕様)
GMCサイクロン(1991年/北米仕様)

サイクロンと名付けられた、このクルマの0-97km/h加速は4.6秒。当時のポルシェ911 カレラ4は、5.2秒を必要としていた。それでいて、ドイツ生まれのスポーツクーペより9倍広い荷室を備えていた。過大な表現だとはいい切れない、動力性能を秘めていた。

1991年9月の自動車雑誌、カー・アンド・ドライバー誌を振り返ると、興味深い比較試乗が掲載されている。北米価格2万5970ドルだったサイクロンが、当時12万2180ドルだったフェラーリ348tとドラッグレースに挑み、勝利を収めたのだ。

0-400m加速のタイムは、サイクロンが14.1秒だったのに対し、348tは14.5秒。110km/hからの加速力でも、ミドシップのフェラーリより鋭かった。
 
サイクロンの話題性へ後押しされるように、荷室をリアシートへ置き換えたSUVスタイルのタイフーンも1992年に追加されている。今回は「世界最速のトラック」とも呼ばれた、この2台をご紹介したい。

現在の高性能モデルのパイオニア

1980年代後半、ゼネラルモーターズ(GM)が擁するGMC(ゼネラルモーターズ・カンパニー)は、アメリカのトラック市場でプレミアムなポジションへ据えられていた。レジャー目的のSUVが、徐々に支持を高める時代にあった。

その頃に開発が進められたのが、圧倒的な加速力を与えられた、このピックアップトラック。フォードF-150 ライトニングや、ダッジから分派したラムSRT-10といったモデルの、パイオニアになった。現在の高性能SUVという市場も、切り開いたといえる。

ブラックのGMCサイクロンと、ホワイトのGMCタイフーン
ブラックのGMCサイクロンと、ホワイトのGMCタイフーン

ただし、ベースのアイデアを生み出したのはGMCではない。同じGM傘下にあったビュイックだった。

1987年、高性能クーペのビュイック・グランドナショナルの生産が終了。3.8L V6ターボエンジンの行き場がなくなっていた。そこで選ばれたのが、小型ピックアップトラックのシボレーS-10。試作車の車高は落とされ、ワイドなアルミホイールを履いていた。

シボレーの上級トラックとしてGMの経営陣へ提案されると、可能性を見出したのがGMCだった。4.3LのV6エンジンへ改良を加え、S-10の兄弟モデルに当たるS-15のボンネットへ押し込み、サイクロンの原型を生み出した。

そのコンセプトカーが発表されたのは、1989年のデトロイト・モーターショー。GMCジミーというSUVがベースになった、4ドアモデルと一緒に展示されるものの、当初は明確な生産計画は立てられていなかったようだ。

モデル名もなく、コンセプト・トラックとだけ呼ばれていた。ジミーから派生したクルマには、カラハリと名付けられていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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