軽いボディに3.0L直6のパワー BMW 530 MLE(E12型) 南アフリカで生まれたM5の起源(2)

公開 : 2023.10.07 17:46

力強さと軽さ、敏捷性が、高級感や快適性と調和

逆バンクのコーナーで不意に隆起部分へ出くわすと、流石にリアのトレーリングアームが暴れるような印象は受ける。とはいえ、落ち着きを乱すほどではない。1970年代の南アフリカと変わらないような英国の路面状態にも、対処してみせる。

力強さと軽さ、敏捷性が、高級感や快適性と見事に調和している。530 MLEの価格は当時の520の2倍と高額だったが、BMW SAは当初の予定を超える227台を提供した。その理由を理解できる仕上がりだ。

BMW 530 MLE(1976〜1977年/南アフリカ仕様)
BMW 530 MLE(1976〜1977年/南アフリカ仕様)

今回ご登場願った530 MLEは、1976年初期の1台。3年前にグレートブリテン島へやって来たという。110台の限定生産が計画されていたものの、人気を受けて1977年にも117台が追加されている。

ボディカラーは、1976年の前期型ではホワイトのみだったが、後期型には3色が設定された。パワーステアリングやパワーウインドウなどの快適装備も、オプションで追加できるようになった。

「530 MLEは、土曜日のレースに勝ったクルマが月曜日のディーラーで売れる、という典型的な例でした」。2019年にレストアを終えたこのクルマに対し、かつてBMW SAのCEOを務めていたティム・アボット氏が振り返っている。

「BMW南アフリカが、スポーティなブランドとして認識されるようになりました。モータースポーツへの本格的な参戦の道も、切り拓かれたといえます」

BMW製スーパーサルーンの青写真

多くの人が、BMW Mモデルの元祖はミドシップ・スーパーカーのM1だと考えているだろう。手を組んだランボルギーニの影響で開発が遅れ、成功といえる結果は掴めなかったかもしれないが、ドラマチックなモデルを起源とした方が確かに理想的だと思う。

1990年代まで、人種差別が制度として残っていた国で作られたクルマより、遥かに望ましいブランドの筋書きになる。それでも、南半球で誕生した530 MLEが、BMW製スーパーサルーンの青写真を描いたことは間違いないだろう。

BMW 530 MLE(1976〜1977年/南アフリカ仕様)
BMW 530 MLE(1976〜1977年/南アフリカ仕様)

1980年の欧州市場へ投入された、E12型M535iへ小さくない影響を与えたことは明らかだ。多くのファンを獲得した、M5の本当の起源がここにある。

協力:イアン・バーギン氏、デューク・オブ・ロンドン社

BMW 530 MLE(1976〜1977年/南アフリカ仕様)のスペック

価格:1万595ランド(新車時)/10万ポンド(約1810万円)以下(現在)
生産台数:227台
全長:4620mm
全幅:1690mm
全高:1426mm
最高速度:207km/h
0-97km/h加速:9.3秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1233kg
パワートレイン:直列6気筒2986cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:200ps/6000rpm
最大トルク:28.1kg-m/3700rpm
トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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