軽いボディに3.0L直6のパワー BMW 530 MLE(E12型) 南アフリカで生まれたM5の起源(2)

公開 : 2023.10.07 17:46

レース参戦のため短期間で準備された特別な5シリーズ 3.0L直6はチューニングで200ps M5の起源といえる南アフリカ仕様を英編集部がご紹介

軽いボディに不足ないパワー コーナリングは病みつき

小さなステアリングホイールを切り込むと、BMW 530 MLEの鋭い回頭性に心が奪われる。その反応は、E12型の5シリーズ然とした、ラグジュアリーなインテリアの眺めとは一致しない。

ノイエ・クラッセ時代を物語るように、キャビンは高くガラスエリアが大きい。運転席からの視界は、全方向に優れる。

BMW 530 MLE(1976〜1977年/南アフリカ仕様)
BMW 530 MLE(1976〜1977年/南アフリカ仕様)

今回のクルマには、ステアリングコラムにエクステンションが追加され、ステアリングホイールの位置が持ち上げられている。身長の高いドライバーでも、居心地がいい。

サスペンション・スプリングとアンチロールバーは引き締められ、ダンパーはビルシュタイン社製。シャシーとコミュニケーションを取りやすく、空のスチール缶を振り回すように軽妙だ。

リアアクスルには、ボルグワーナー社製のリミテッドスリップ・デフが組まれ、下品なほどにテールハッピーというわけではない。どの程度のスライドを誘えるか、正確に予想できる。

軽いボディに不足ないパワーが組み合わされ、コーナリングは病みつき。フロントノーズを狙った方向へ回し、アクセルペダルを加減しながら鋭い脱出を試みる。後方からは、聴き応えのある直列6気筒サウンドが放たれる。

ホットハッチ的にショートレシオな5速MT

この時代のBMWエンジンは、魅力的な音響体験を与える。目の細かいメッシュで覆われた6本のトランペットが、吸気ノイズも響かせる。4000rpmを超えると威勢が増し、6000rpmまで引っ張れば、レーシングカーさながらのクレッシェンドが待っている。

生々しいサウンドが、モータースポーツを前提としたホモロゲーション・モデルであることを証明する。スーパーカーのM1を彷彿とさせるほど。アイドリング時も、積極的なカムプロファイルの影響で穏やかではない。

BMW 530 MLE(1976〜1977年/南アフリカ仕様)
BMW 530 MLE(1976〜1977年/南アフリカ仕様)

さらに、ゲトラグ社製の265型5速マニュアルがベストマッチ。1速が左下に飛び出たドッグレッグ・パターンで、中速域での喜びを増長させる。多くのMモデルのように、ドイツのアウトバーン向きなハイレシオではない。

5速でのギア比は、1000rpm当たり約32km/h。上級サルーンではなく、すばしっこいホットハッチへ与えられるようなショートさで、思い切り直列6気筒エンジンを回せる。

BMW SAが施した巧妙なチューニングによって、ラフな印象は与えない。快適性も保たれている。大幅な軽量化にも関わらず、走行中は粗野な振動音とも無縁だ。

サスペンションも強化されているが、荒れた路面の一般道との相性は好ましい。隆起部分や舗装の剥がれた穴をしなやかに処理しつつ、姿勢制御は適度に引き締まっている。乗り心地は決して悪くない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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