巨大バッテリーを丸ごと交換 技術は高度でも特徴は薄い ニオEL6 ロングレンジへ試乗

公開 : 2023.11.24 19:05

平均的なドライバーが不満を抱かない走り

運転体験は、電動SUVとして納得できる水準。過剰なパワーを、右足で簡単に引き出せる。アクセルレスポンスやダンパーの硬さ、ステアリングの重さを調整できるドライブモードは、エコ、コンフォート、スポーツ、スポーツ+と各種用意されている。

0-100km/h加速の鋭さも、4.5秒から12.9秒までの5段階から予め指定できる。目新しい機能で、ゲーム的な要素とはいえ、ニオのクルマに対する姿勢が表れている。最短の4.5秒では、アクセルレスポンスが過剰になるけれど。

ニオEL6 ロングレンジ(欧州仕様)
ニオEL6 ロングレンジ(欧州仕様)

車重は2403kgあり、ドライブモードを切り替えても、EL6が軽く感じられることはない。ステアリングホイールの感触やフィードバックは限定的。ペダルの踏みごたえも薄味で、クルマとの一体感は高くない。それでも、反応は自然だ。

意欲的に運転する気にはならないかもしれないが、穏やかなモードでは、全般的にスムーズ。平均的なドライバーが、不満を抱くことはないはず。

乗り心地は、基本的に落ち着いている。試乗車には20インチのアルミホイールが履かされていたが、アダプティブダンパーが路面の乱れを不足なく均していた。

ツギハギの多い市街地では小さな揺れを伴うが、不快に感じるほどではなかった。高速道路での凹凸の処理は、滑らかに感じた。

ニオで特筆すべきもう1点が、高度な運転支援システムだ。センサーユニットが33基と、ライダーと呼ばれるレーザーレーダーが1基搭載され、周囲を監視。エヌビディア社製のクワッドCPUで、毎秒1兆回の高速演算を可能としている。

技術水準は感心するほど高い 薄い特徴

気になるお値段は、75kWhの駆動用バッテリーで英国では約6万ポンド(約1086万円)が見込まれている。100kWhでは、約6万8000ポンド(約1231万円)へ上昇するようだ。決して安くはないが、高度な装備内容を考えると妥当な数字だと思う。

率直にいって、EL6の技術水準は感心するほど高く、英国でも一定の支持を集めると予想できる。他方で、特徴の薄さも強く心に残った。自動車保険のテレビCMに登場する、架空メーカーのクルマのよう、と表現しても良いかもしれない。

ニオEL6 ロングレンジ(欧州仕様)
ニオEL6 ロングレンジ(欧州仕様)

確かに、価格に見合う価値はあるとは思う。だが、より魅力的なバッテリーEVが、同価格帯に存在することも間違いない。

ニオEL6 ロングレンジ(欧州仕様)のスペック

英国価格:約6万8000ポンド(約1231万円/予想)
全長:4854mm
全幅:1995mm
全高:1703mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:4.5秒
航続距離:529km
電費:5.8km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:2403kg
パワートレイン:誘導非同期モーター+永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:90kWh(実容量)
急速充電能力:180kW(DC)
最高出力:490ps
最大トルク:71.2kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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