「火を守る」 マセラティ ジャパン木村代表 グラントゥーリズモ発表会で語る

公開 : 2023.11.24 22:55

エンジン車か 電動モデルか

モデナとトロフェオの大きな違いはエンジンのパフォーマンスで、前者は最高出力490psなのに対し、後者は550psにアップし、最高速度は302km/hから320km/h、0-100km/h加速は3.9秒から3.5秒にそれぞれ向上する。

フォルゴーレはフォーミュラEの経験をフィードバックしており、300kWのモーターをフロント1基、リア2基搭載した3モーターのAWDとなる。

築地本願寺で開催されたアジアパシフィック・プレミアに登壇したマセラティ ジャパンの木村隆之代表取締役と、業務執行取締役の玉木一史ジャパン ジェネラルマネージャー。
築地本願寺で開催されたアジアパシフィック・プレミアに登壇したマセラティ ジャパンの木村隆之代表取締役と、業務執行取締役の玉木一史ジャパン ジェネラルマネージャー。    マセラティ ジャパン

92.5kWhの容量を持つ駆動用バッテリーは床下ではなく、センタートンネルとリアシート部分にTボーン型に搭載した。タイムレスデザインとの融合が念頭に置かれている。

このフォルゴーレについて木村氏は、「伝統とは灰を崇拝することではなく火を守ることだ」という作曲家グスタフ・マーラーの言葉を引用し、エンジン車と同等の前後荷重配分、情熱的なドライビングなどにより、マセラティらしさを尊重しつつ電動化という新しい世界を確立していると説明した。

とはいえ日本市場はフォルゴーレよりも、“最後のエンジン車かもしれない”ということで興味を抱く人が多くなりそうとも分析していた。

またグレカーレは他のブランドから来た人が多かったのに対し、グラントゥーリズモは伝統的なクーペスタイルということで、昔からのファンが多くなるのではないかと予想していた。

まさかの14色 「プリズマ」

会場に展示された2台のグラントゥーリズモは、どちらも特別仕立てだった。

プレゼンテーションが行われたホールに置かれていたのは、A6 1500が登場してから75周年であることを記念した「75thアニバーサリーエディション」。展示されていたマットグレーのボディにレッドのアクセントのほか、ブラックボディにグリーンアクセントという仕様もあり、ホイールのセンターとシートのヘッドレストに75周年記念のロゴが与えられている。

グラントゥーリズモ・プリズマ
グラントゥーリズモ・プリズマ    マセラティ ジャパン

一方ホールに通じるロビーに展示されていたのは、マセラティのカスタマイズプログラム「フォーリセリエ」を通じて制作され、ミラノデザインウィークに展示されたワンオフの「プリズマ」だった。

ボディカラーには14もの色が使われており、そのうち12色は過去の車種に使われたもの。グラデーションの部分にはセブリングやミストラルなど名車の文字を見ることができる。すべて手作業で仕上げられたそうで、イタリアならではのアーティスティックなクラフトマンシップに圧倒された。

そして建物の前には、1957年生まれの3500GTと1998年生まれの3200GTの2台が展示されていた。ヒストリックな車種だけを置くのではなく、自分も所有していた比較的最近の車種も並べるところに好感を抱いた。

過去の遺産だけにとらわれず、75年の歴史全体を振り返ったうえで、マセラティにふさわしい未来を考え、かたちにしたのが新型グラントゥーリズモなのだと感じた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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