フォルクスワーゲン・クロストゥーラン

公開 : 2012.12.26 17:14  更新 : 2017.05.29 18:58

期待できそうな予感はあった。ヘビーデューティな装いに仕上げたクロストゥーランに対してである。

例えば紛うことなき駄作だった先代ボルボV70は、そのヘビーデューティ化粧版のXC70が最も破綻のない仕上がりになっていた。またVW自身も先代ポロに追加したクロスポロにおいて、基準車の冴えないシャシー性能をそこそこのレベルに引き上げていた。ブレーキング時に前輪がトーインして巻き込むという悪癖もブッシュを締めたことで是正されていた。そんな前例があったので、クロストゥーランも基準車より何らかの良化があるかもしれないと考えたのである。

そもそもトゥーランは、先代V70や先代ポロのように瑕疵が走りにはっきり表面化した冴えないクルマではない。ゴルフのプラットフォームを使って3列ミニバンとした派生車種でプラットフォームからしてしっかりしている上に、3列7座のパッケージも生真面目で、安全性を含めた仕立ても入念である。日本でCセグメント格の3列ものは3列目の居住性を割り切って中央列のそれを普通の2列のクルマと同等に確保するという手法を採っているのに対し、先代トゥーランは2列目と3列目を均等に配分していて、そのおかげで2列目と3列目が同じように微妙に割を食うことになっていたのだが、現行型ではゴルフに対するホイールベースの延長しろを先代の+100mmから+300mmに増して、そこへの対応をした。走りも安定を第一に手堅くまとまっていた。つまり、元は悪くなかったのである。

さて、そんな現行トゥーランにVWが行った<クロス化>は、フェンダー周りに黒い樹脂モールを張り付けて一丁上がりてな安手の加飾レベルのものではない。車高も+10mmほど上がった。後輪の幅を前輪よりも太くするところまでやっている。前後205/55R16が前215/50R17+後235/45R17になった。それなりに手が込んでいるのである。

ところが、それが裏目に出た感じだった。バネ下が暴れるのである。路面不整を拾ったり、ロールやピッチングが発生すると、明らかにフロントがバンプストッパーに乗りかかってしまう様子で、上屋がモコモコと揺すられて不快なのだ。クルマを降りて確認してみれば、バンプストッパーはかなり硬めの発泡ウレタンで、これを指1本分ほどのクリアランスで設置している。しかし、それは基準車と同じなのだ。ゴルフⅤおよびⅥ系のアシ周りは能力的にはっきりと前が後ろに対して負けるバランスで、基本的にロールアンダー傾向を持つ。そのロールアンダーを抑えるためにフロントサスのストロークを止めるのは間違っていない。太く重いタイヤが、品のよろしくないアシさばきのそもそもの原因なのだ。振りっ返しなどで速いロールをさせると、いきなり硬いストッパに当るから、そこで舵が抜けそうになることもあった。

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