伝統のオフロード性能 水深850mmに対応、レンジローバー初のEV「最も静か」

公開 : 2023.12.14 18:05

・レンジローバー初のEVモデル、2024年の正式デビューに向け予告画像を公開。
・「静かで洗練された」高級電動SUV。オフロード性能も抜かりなく。
・水素燃料電池への対応は? 多様化するパワートレイン。

英国の高級電動SUV 2024年発売へ

JLR(ジャガーランドローバー)は、新型の電動SUV「レンジローバー・エレクトリック」の予告画像を公開するとともに、予約受付開始時に優先的に案内するプライオリティアクセスへの登録サイトをオープンした。

ブランドの最上位SUVであるレンジローバー初の完全EVモデルであり、JLRのプロダクト・エンジニアリング担当責任者であるトーマス・ミュラー氏は、「これまでで最も静かで洗練されたレンジローバー」になるとしている。

スタイリングは既存のエンジン車と大きく変わらないはずだ。(編集部作成予想CGイメージ)
スタイリングは既存のエンジン車と大きく変わらないはずだ。(編集部作成予想CGイメージ)    AUTOCAR

同社は当初、予約受付を年内に開始するとしていたが、現在では2024年に正式に販売を開始することになっている。

レンジローバー・エレクトリックには、内燃エンジン車とEVの両方に対応したMLAフレックス・プラットフォームが採用される。予告画像によると、独自のデザイン要素がいくつか見受けられるものの、基本的なスタイリングは既存モデルを引き継いでいるようだ。

また、800Vアーキテクチャーにより超高速充電に対応する。

最大850mmの渡河水深 伝統のオフロード性能

レンジローバー・エレクトリックの仕様の詳細はまだ明らかにされていないが、ミュラー氏はエンジン車と同じ「どこへでも行ける」性能を持ち、他の高級電動SUVを凌ぐ牽引、渡河(最大水深850mm)、全地形対応能力を備えているとした。

2基のモーターを搭載し、オフロードでのポテンシャルを高めるトルクベクタリングなどを実装すると予想されている。

レンジローバー・エレクトリックの予告画像
レンジローバー・エレクトリックの予告画像    JLR

JLRは現在、スウェーデンやドバイなどでプロトタイプによるテストを行っている。同社によると、このテストでは特にアンダーフロア、バッテリーの耐久性、温度ディレーティング(定格値以下での動作)などを検証するという。

レンジローバー・エレクトリックは、既存のマイルドハイブリッド車、PHEVとともに英ソリハルで製造される。当初はサードパーティ製のバッテリーを使用し、最終的にはJLRの親会社タタが計画中のサマセット州のギガファクトリーで生産されるバッテリーに切り替える予定だ。

バッテリーと電気駆動ユニットは、英ウォルバーハンプトンにあるJLRのエレクトリック・プロパルション・マニュファクチャリング・センターで組み立てられる。

レンジローバーの進化 水素燃料電池車の可能性も?

レンジローバー・エレクトリックに関する情報は厳しく管理されているようで、今のところプロトタイプの目撃情報などもない。しかし、外観上は既存のエンジン搭載車と大きく異なることはなさそうだ。

レンジローバーのデザインが長年にわたって継承・進化してきたことから、その馴染みあるシルエットはモデル固有のものとなっており、パワートレインに関わらず引き継がれる可能性が高い。

レンジローバー・エレクトリックの予告画像
レンジローバー・エレクトリックの予告画像    JLR

当初、ジャガーXJの次世代モデルとプラットフォームを共有する計画だったが、XJはブランドのビジョンと相容れないとされ、開発が中止されてしまった。

JLRはBMWと開発パートナーシップを組んでいるが、レンジローバー・エレクトリックがBMWの現行EV、あるいはジャガーIペイスとどのような関係性を持つことになるかは不明だ。いずれにせよ、四輪駆動システムを備え、エンジン車と同等の出力数値を持つことはほぼ確実である。

興味深いことに、ランドローバーのプログラム・ディレクターであるニック・ミラー氏は以前本誌の取材に対し、MLAプラットフォームは水素パワートレインにも容易に対応できると語っていた。つまり、FCEV(水素燃料電池車)のレンジローバーが登場する可能性もある。

JLRは2021年、水素開発計画「プロジェクト・ゼウス」を立ち上げ、ディフェンダーのFCEVプロトタイプを公開した。2036年までに排出量ゼロの達成に向け、水素はバッテリーEV技術を「補完する」ものになると述べている。

大型で重く、長距離走行を重視するランドローバーのモデルにとって、水素はバッテリーよりも適切な「代替燃料」となり得るかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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