社会人1年目、ポルシェを買う。

2021.10.21

【社会人1年目、ポルシェを買う。】第140話:カート公式レースに参戦(1)

運任せにならず、うちひしがれた

サーキットでみるマシンは、精悍だった。

そもそもカートという乗り物に慣れぬうえ
それを夏の炎天下で、
そして大きなサーキット本コースで走る。

ふつうならば緊張するかもしれないけれど
予想がつかねばもはや身構えようもない。

なるようになれ! と半ば運任せで挑む。
結果、運任せにならず、うちひしがれた。

暑い。
という言葉では表現できないほど、
逃げない体温と直射日光で
頭がやんわり締め付けられるように痛い。
ヘルメットにグローブ、
長いソックスにハイカットシューズ。
安全性を考えると当然だが、蒸し風呂だ。

そのうえ、
体は地面スレスレでむき出し。
もちろんシートベルトもない。
さらに、もてぎの本コースは、
小さなカートマシンで走るには
あまりに、あまりに、あまりに広い。

「クラブレーシング」のマシンが搭載する
いわゆる芝刈り機の動力源にもなる
4ストロークホンダGX270エンジン
&クラッチ付きユニットでも
長い下り坂のストレートでは100km/hを
軽く超えてくる。

またメインストレートの先、
第1〜2コーナーをはじめ
ほとんどのコーナーで
アクセルを踏み切ったまま。

わかっていても、どうしても
コーナー手前でブレーキング
あるいはアクセルから足を離してしまう。

これは怖いぞ……。

われわれのユニット以外にも
・ヤマハ製MX300RKC
・ブリッグス&ストラットン製
を搭載するもっと速いマシンも走る。
赤字に白色のゼッケンが
ミラーに迫りくる恐怖といったら……。

正直、追い越される際は、
もう「どうぞ先に行って下さい」と
拝むような気分だし
皆さんジェントルマンなので
追い越し後はお礼のジェスチャーをしてくれるけれど
いやいやこちらこそもう
ありがとうございます……
じゃんじゃん抜いていってください。

といった気持ちになるのだった。

これはまず心が追いつかないぞ、と思う。
そして心が追いつかないまま、
初回の練習はあっという間に終わった。

怖い怖い怖い……。ただそれだけ。

プライベートの練習を除く
公式練習はあと2回……。
最高のチャンスをくださったのに、
だめかも。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    上野太朗

    Taro Ueno

    1991年生まれ。親が買ってくれた玩具はミニカー、ゲームはレース系、書籍は自動車関連、週末は父のサーキット走行のタイム計測というエリート・コース(?)を歩む。学生時代はボルボ940→アルファ・スパイダー(916)→トヨタ86→アルファ156→マツダ・ロードスター(NC)→VWゴルフGTIにありったけのお金を溶かす。ある日突然、編集長から「遊びにこない?」の電話。現職に至る。

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