レクサスやフォードとも乗り比べ ルノーのトップが自ら試乗する、極秘の新型車(後編) 新CEOの素顔とは

公開 : 2026.06.12 17:25

フランスの自動車大手ルノー・グループのCEOに就任したフランソワ・プロヴォスト氏。全幹部を引き連れての新型車試乗セッションにAUTOCAR UK編集部のクロプリー編集長が同行し、新しいトップの素顔を探りました。

ハードな走りにも慣れた様子

次に、広大なテストコースを横切り、ハンドリングとラックへ向かう。そこは、アルピーヌルノー・グループの高性能車ブランドとなる何年も前に、ルノー・スポールの試乗やデモンストレーションでかすかに筆者の記憶に残っている場所だ。そこで、ルノー・スポール復活の噂について恒例の質問を投げかけてみると、飾り気のない否定的な答えが返ってきた。

「ルノーは数年前にそこから手を引くことを決めました。その方針を変えるつもりはありません」

ルノー5ターボ3Eのプロトタイプとフランソワ・プロヴォストCEO(中央)、筆者(右)
ルノー5ターボ3Eのプロトタイプとフランソワ・プロヴォストCEO(中央)、筆者(右)    AUTOCAR

さて、プロヴォスト氏はここで、ルノー・グループと競合車の比較・評価を6回ほど行う。まず、彼はルノーのテストドライバーの1人と共に、超高性能な青いルノー『5ターボ3E』のプロトタイプに乗り込む。最初のコーナーで激しく振り回されるのを目撃していただけに、そこから降りてきた時の彼の落ち着きには驚かされた。

次に彼が乗り込んだのはヒョンデアイオニック5 N。こちらはもっと大型で比較対象とは言い難いが、スポーティなEVとしては最も近い存在である。彼は、内燃機関のスポーティなエンジン音を再現している点に感心し、ターボ3Eでも同様の取り組みを検討すべきかと考える。誰かがそれをメモに書き留める。

ステアバイワイヤをレクサスと比較

次はステアバイワイヤ技術の評価だ。ラファールに実験的に搭載されたシステムで、プロヴォスト氏はこれをEVのレクサスRZと比較して試す。ラファールでは少し操作に慣れが必要だった。彼が望むほどの重厚感はないが、ステアリングのブレが少ないことや、狭い場所での機敏な動きは彼の関心を引いた。

プロヴォスト氏は、特に小型車におけるステアバイワイヤの費用対効果について議論を主導するが、それでもいずれ普及するだろうという意見には同意を示す。同席しているのは、ルノー・グループのエンジニアリング責任者であり、明らかにステアバイワイヤの熱心な支持者であるフィリップ・ブリュネ氏だ。

ルノー・トラフィックEテック
ルノー・トラフィックEテック    ルノー

ブリュネ氏は、一度慣れれば従来のシステムが「扱いにくい」と感じるようになる、と指摘する。そして、量産仕様まで開発が進んだレクサスでのプロヴォスト氏自身の体験が、その主張を裏付ける。このセッションの価値は明らかだ。今後、バイワイヤのコストが議論される場において、CEOはメリットを明確に実感できるだろう。

テストは続く。わたし達はルノーの新型商用EV『トラフィックEテック』を、同セグメントで好調な販売実績を誇るフォードEトランジット・カスタムと比較試乗した。まったく新しい車両と、古くから定評のあるライバルとの乗り比べだ。

両車とも、現代のバンで求められる乗用車のような運転のしやすさという点では共通している。しかし、ルノーが1世代先を行っているという事実は、すぐに明らかになる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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