ルノーのトップが自ら試乗する、極秘の新型車(前編) 全幹部を引き連れるセッションに、UK編集部が同行取材

公開 : 2026.06.12 17:05

フランスの自動車大手ルノー・グループのCEOに就任したフランソワ・プロヴォスト氏。全幹部を引き連れての新型車試乗セッションにAUTOCAR UK編集部のクロプリー編集長が同行し、新しいトップの素顔を探りました。

派手さのない57歳の新CEO

豊富な経験を持ちながらも目立たない存在だったルノー・グループの重鎮、フランソワ・プロヴォスト氏が、昨年7月にルカ・デ・メオ氏の後任として突然CEOに就任した。それまで彼が、よく知られたデ・メオ氏のスター性や、メディアの注目を集めるための話題作りを真似ようなどとは、誰も予想していなかった。

デ・メオ氏が、欧州各地で自動車メーカーの再生を指揮し、自らの功績を確固たるものしてきた、いわば吟遊詩人のような自動車業界のトップだったのに対し、プロヴォス氏はより静かで、派手さのない人物のように見えた。公式写真に写る彼は、背が高く眼鏡をかけた、明らかに温厚そうな57歳の男性で、大学学長か牧師のような風貌だった。

ルノー5 ターボ3Eのプロトタイプに乗るフランソワ・プロヴォストCEO
ルノー5 ターボ3Eのプロトタイプに乗るフランソワ・プロヴォストCEO    AUTOCAR

プロヴォスト氏は、自動車業界から高級ファッション業界へのデ・メオ氏の急な転身に戸惑うフランス国民に対し、ルノーに必要なものを理解していることを早々に示した。彼は「継続型のCEO」となるつもりだったのだ。

2021年初頭に発表された6年・3段階のグループ再生計画「Renaulution」の立案者の1人であり、これを着実に実行していくと約束した。彼の深い知識と冷静さにより、シームレスな引き継ぎが実現した。

しかし、トップに就いてから最初の10か月間で、プロヴォスト氏は自身のやり方で物事を進める姿勢もはっきりと示した。自動車市場がますます厳しくなっていることを見据え、「Futuready」という名の下、独自の改革策を次々と打ち出しているのだ。

経営体制を一新したルノー

Futuready計画はルノー・グループの経営体制を簡素化し、モデル開発コストを40%削減するものだ。ルノーの主要部門には新たなリーダーが就任し、旧モビライズ(Mobilize)とアンペア(Ampere)の各部門は、コスト削減と人材再配置のため再統合された。2030年までに全ブランドで36の新モデルが投入される予定だ。

また、インド、韓国、ラテンアメリカ市場へさらに注力していく方針で、これらの市場は、プロヴォスト氏が以前活躍していた地域でもある。

新CEOの下、ルノーは経営体制を改めつつ事業拡大を目指している。
新CEOの下、ルノーは経営体制を改めつつ事業拡大を目指している。

これらすべてが斬新な発想と迅速な行動によるものであり、AUTOCAR UK編集部は新CEOとのインタビューを最優先事項として、早々に取材依頼を行った。通常、企業のCEOは落ち着いた快適な場所、つまり慣れ親しんだ豪華な空間で記者と面会し、秘書が部屋の外を見張っているものだ。しかし、プロヴォスト氏の場合は少し違った。

取材依頼の後、ルノー本社の上層部から、パリ南西部の秘密のテストコースでプロヴォスト氏と7時間を過ごすという提案があったのだ。まず、発売間近のモデルや開発途中のモデルなどを1時間にわたって見学し、その後、彼が乗用車やバンをテストする場に立ち会うというものだ。テストは、コース上での高速走行や静止状態での評価、主要な競合製品との比較など多岐にわたる。

見たり、歩いたり、運転したりしながら、話し合うことになるのは明らかだ。筆者は、市場に出るまでまだ数年を要する新製品を目にすることになる。それについてはある程度言及できるものの、詳しい説明はできない。

最も重要なのは、最高経営責任者が自社の新製品についてどのような決定を下すのか、真横で見られることだ。彼はデザイナー、エンジニア、ディーラー、あるいは顧客として振る舞うのか? それともそのすべて?

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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