V8 620psのフェラーリ・ローマでグランドツアー ル・マン-ロンドン長距離試乗 前編

公開 : 2022.08.14 08:25

マラネロの最新2+2グランドツアラー、ローマ。ル・マンからロンドンまでの長距離試乗で、その実力を確認しました。

マラネロ最新のグランドツアラーの実力は?

この企画は単純。ル・マン24時間レースの開催に合わせ、フランスから英国へのグランドツアーを敢行し、フェラーリ・ローマの実力を確かめようというものだ。

夜道をヒタヒタと走る情景を思い浮かべていたが、実際は違った。夏至の近いル・マンは、午後10時頃まで明るい。英国へ入る直前も昼間のようだった。それでも、マラネロ最新のグランドツアラーの実力を、存分に確かめることはできた。

フェラーリ・ローマ(英国仕様)
フェラーリ・ローマ(英国仕様)

フェラーリ・ローマの発売は2019年。AUTOCARではその直後に試乗しているが、COVID-19の流行で大陸横断といえるようなロングドライブは実施できていなかった。

さらに、フェラーリは1000psのSF90 ストラダーレや、V6エンジンをミドシップした296 GTBなど、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)のスーパーカーを投入。2+2レイアウトのローマは、少し影の薄い存在になっていたように思う。

ローマのフロントへ載っているのは、粘り強く高回転型の3.9L V型8気筒ツインターボ・エンジン。ハイブリッドではなく、最高出力620psと最大トルク77.4kg-mを発揮する。ユニットとしてはポルトフィーノと共有しているが、単なるボディ違いではない。

レイアウトは、クラシカルなフロントエンジン・リアドライブ。その点でも共通するが、フェラーリのうたい文句のとおり、コンセプトは明確に異なる。

モダン・フェラーリの傑作といえるデザイン

「フェラーリ史上最もパワフルで運転の楽しい、フロント中央寄りにV8エンジンを搭載した2+2です。日常的な運転のしやすさと卓越した快適性によって、このコンセプトが実現されているという点も忘れないでください」。かなり壮大な内容だ。

そして、非常に美しい。実物を目の当たりにすると恋に落ちてしまう。AUTOCARが準備したル・マンの拠点で、SF90と296 GTBの2台と一緒に並んだ姿は、確かに少し地味に感じられた。相手が、レッドとブルーという配色だったこともあるけれど。

フェラーリ・ローマ(英国仕様)
フェラーリ・ローマ(英国仕様)

そんな状況でない限り、モダン・フェラーリの傑作と呼べるほど妖艶。プロポーションが整っていて、面構成は極めてシンプル。パールホワイトというボディ塗装が、スタイリングを一層引き立てていた。ハイライトとシャドウの入り方は見事だ。

アグレッシブではないものの、躍動感がある。英国製のライバルより美しいと表現しても、差し支えないだろう。

今回のグランドツアーの計画は、ル・マン24時間レースを観戦してから、夜道でロンドンへ向かうというもの。SF90 スパイダーの登場と重なって、間際に少々の計画変更を迫られたが。

果たして、ローマは急ぎ足のロング・クルージングなど朝飯前。約640kmの道のりは、最後まで印象的なほどに快適だった。

乗り心地には柔軟性があり、ロードノイズは控えめ。シートの座り心地も良く、連続して2時間くらい運転しても疲労感は少ない。価格差がかなりあるローマとSF90だが、快適性という点ではまったく劣っていない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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