社外品マフラーは違法か 排ガス規制、英国整備工場の「有罪」判決で矛盾が明らかに

公開 : 2024.02.13 18:25

自動車の型式認証での排ガス規制と車検時の規制に矛盾? 英国の整備工場がマフラーの触媒コンバーターを取り外して有罪判決に。社外品のスポーツ触媒の「グレーゾーン」を巡り事業者間で動揺が広がる。

社外品の「グレーゾーン」

自動車に違法な改造を施したとして、英国の整備工場が有罪判決を受け、排ガス規制に関する社外品マフラーの「グレーゾーン」がにわかに注目を集めている。

昨年11月、イングランド北部ウェイクフィールドを拠点とするAETモータースポーツ社は、触媒コンバーターを取り外し、エンジン・コントロール・ユニット(ECU)を改造して騒音レベルを上げ、公道走行を違法とする改造を行なったと指摘され、裁判所から7234ポンド(約135万円)の罰金を命じられた。

英国で型式認証時の規制と車検時の規制に矛盾があると指摘されている。
英国で型式認証時の規制と車検時の規制に矛盾があると指摘されている。

この訴訟は自動車基準当局(DVSA)によって提起されたものであり、担当判事はAETモータースポーツ社に対し、事業者は法律を知る義務があると述べた。しかし、この事件を巡り、英国の事業者間で動揺が広がっている。

自動車整備工場を運営するオートダイナミクス社のジェームス・ウィルズ取締役は、裁判所の判断は正しいが、この事件で排ガスに関する英国の法律の矛盾が露呈しており、解決しなければならないと主張する。

「公道走行可能なクルマのデキャット(De-Cat、触媒を取り除くこと)は違法であり、車検不合格の原因になります。そのため、ほぼ同じ性能を得られるスポーツ触媒コンバーターを装着するのが一般的です。しかし、車検を通すには十分ですが、クルマの型式認証の段階で設定された排ガス規制を満たしているかどうかは疑問です」とウィルズ氏は言う。

マフラーの触媒は、排ガスから有害な成分を取り除く浄化の役割を担っている。クルマのチューニングにおいては、排ガスのフロー(流れ)を改善するために触媒量の少ない「スポーツ触媒」に交換するケースがある。英国では、いわゆるアフターマーケット品の触媒の量は、条件付きで純正品の半分以下であってもよいとされている。

その条件とは、欧州のEC型式認証マーク(eマーク)を取得した商品であること、エンジンに負荷がかかっていない低回転域で排ガスが規制値内に収まっていることであり、これらを満たせば車検に通すことができる。

法律の矛盾 当局はあいまいな返答

問題は、エンジンが高速回転したり、ターボチャージャーが作動したりすると、純正品の型式認証制限を超える排ガスを発生する可能性があるという点だ。

ウィルズ氏は本誌の取材で、「このため、車検の検査官がスポーツ触媒装着車の排ガスを作動範囲全体で適切に検査した場合、違法と判断されるのではないかと心配しています。誰かが起訴される前に、この車検と車両型式認証規制の矛盾を解決する必要があるのです」と語った。

英国の現在の法律では、車検に通っていても「違法」とみなされるおそれがあるという。
英国の現在の法律では、車検に通っていても「違法」とみなされるおそれがあるという。

本誌はDVSAに対し、スポーツ触媒装着車の型式認証状況について明らかにするよう求めた。広報担当者は、大気汚染物質の排出基準に適合しなくなるような改造を施した車両を公道で使用することは違反であり、したがって型式認証の制限に適合していないと判明した車両は違法となる可能性があると述べた。

しかし、1台ずつすべての車両が型式認証されているわけではないので、例えば、実際に公道を走っている車両の排ガスが型式認証の際と同じ方法で測定されることは「非常にまれ」であるという。

「メーカーはすべての車両を型式認証するのではなく、車両認証機関(VCA)にさまざまな車両を提出し、試験と認証を受けます。車検では、3年目以降のすべての車両が、型式認証基準に沿った要求基準を満たしていることを保証します。DVSAは、車両が型式認証基準を満たしているかどうかをチェックするために市場監視を実施しています」

DVSAのコメントに対し、ウィルズ氏は苦言を呈した。

「DVSAは、一方では型式認証の規制を満たさなければならないと言いながら、他方では試験が異なり、すべての車両が型式認証されているわけではないので、チェックすることはほとんどないと言っています。このため、自分のクルマが車検に合格していても、排ガス規制違反でDVSAに起訴される可能性があるということをドライバーは覚えておかないといけません」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事