この楽しさは「リアル」 世界初の電動ドライバーズカー ヒョンデ・アイオニック5 Nへ試乗

公開 : 2023.11.29 19:05

ヒョンデ・アイオニック5の高性能版、「N」が登場 オーバーブーストで650ps 全開でニュルを2周可能 タイカンを上回る回頭性と調整域 英国編集部は絶賛

ドライバーズカーとして高く評価できる

最初から結論。ヒョンデアイオニック5 Nは、純粋なドライバーズカーとして高く評価できる、初めてのバッテリーEVだと思う。

2000馬力超えのハイパーカーから小さな前輪駆動のハッチバックまで、印象的な電気自動車は何台か存在する。だが、アイオニック5 Nは最高に運転が楽しいと、確信を持ってご紹介できる。

ヒョンデ・アイオニック5 N(韓国仕様)
ヒョンデ・アイオニック5 N(韓国仕様)

振り返れば、内燃エンジンのi30 Nとi20 Nは、それぞれのクラスでベストと呼べるホットハッチへ仕上がっていた。同社の高性能部門、Nパフォーマンスの好調ぶりも伝わってくる。

ヒョンデは、優秀な人材の採用にも積極的。2019年には、フォード・フォーカス RSの開発にも尽力した、ティロン・ジョンソン氏も招聘した。彼の才腕も、アイオニック5 Nへ反映されているに違いない。

ベース車両はアイオニック5。ボディシェルは、剛性を高めるため溶接ポイントが42か所も増えている。パネル類を結合する接着剤は、2.1mぶん長く用いられているそうだ。

クイックなレシオに設定された専用ステアリングラックは、マウントポイントが強化されている。駆動用モーターとバッテリーは、より硬く固定されている。サスペンション・サブフレームも、強度を増した専用品とのこと。

増大したパワーへ対応するため、リア・アクスルは再設計。電子制御のリミテッドスリップ・デフ(LSD)も組まれる。

オーバーブーストで650ps 全開でニュル2周可能

駆動用モーターの出力は、フロント側が226psで、リア側は383ps。システム総合で609psを発揮する。オーバーブースト機能を用いると、238psと412psまで10秒間強化され、合計650psを引き出せる。

ただし、その後は冷却時間が必要になる。熱の管理は、バッテリーEVでも重要なことに変わりはない。駆動用バッテリーの容量は、同じ体積ながら84kWhへ増えている。

ヒョンデ・アイオニック5 N(韓国仕様)
ヒョンデ・アイオニック5 N(韓国仕様)

Nレース・モードを選ぶと、最高出力が僅かに制限されつつ、高いパフォーマンスを連続して発揮できるようになる。ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェを、8分切りで2周できるそうだ。ヒョンデは、他のモデルでは真似ができないだろうと主張する。

気張らなくても、アイオニック5 Nの運転は望外に楽しい。複雑なシステムが載っているのだが。

ステアリングホイール上には4つのボタンが並び、6項目のドライブモードを選択でき、その2つは任意の設定を登録可能。さらに、先出のオーバーブースト機能も起動できる。

駆動用モーターの反応やステアリングホイールの重さ、ダンパーの硬さ、LSDの効き、ヘッドアップ・ディスプレイの表示、合成エンジンノイズのオン/オフを指定できる。ノイズをオンにすると、ギミックのシフトチェンジも利用できるようになる。

回生ブレーキの強さは、かなり広範囲に可変する。ブレーキペダルを踏まずに発進・停止をまかなえるワンペダルドライブだけでなく、アクセルペダルを緩めるだけで、ABSが動作するほど強力に利かせることも可能だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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