サルーンボディを切り貼り! フォード・ゼファー MkII ファーナム・エステート(1) 生き残りをかけたワゴン

公開 : 2024.03.03 17:45

生産が間に合わない勢いだった3兄弟の需要

ゼファー MkIの評判を強くバックアップしたのが、1953年のラリー・モンテカルロでの優勝。直列6気筒エンジンが許容する能力の高さが示され、ハイパワーを求めるドライバーへ応えるため、チューニング市場が生まれたほど。

専用シリンダーヘッドのほか、ツイン・キャブ化やトリプル・キャブ化、ビッグバルブ、エグゾースト・マニフォールドなど多数のパーツを各メーカーが提供。保守的な設定だった、6気筒エンジンの可能性を引き出した。

フォード・ゼファー MkII ファーナム・エステート(1956〜1962年/英国仕様)
フォード・ゼファー MkII ファーナム・エステート(1956〜1962年/英国仕様)

加えて、ベースグレードでもゼファー MkIは価格価値に優れていた。1953年に追加された上級モデルのゾディアック MkIには、ツートーン塗装にスポットライト、ホワイトウォール・タイヤ、レザー内装やヒーターを装備。訴求するターゲットの幅を広げた。

生産が追いつかなくなるほど3兄弟の需要は強く、ゼファーとゾディアックをフォードは5年間で約17万5000台提供。その人気に押され、デイムラーやブリストルといったメーカーは、衰退を余儀なくされてしまうのだが。

ファーナムのEDアボット社が提供したステーションワゴンは、その2%に過ぎなかった。とはいえ、2代目3兄弟にもラインナップさせるには充分な数といえた。

リアシートはボディから取り外し可能

1956年に発売された2代目、ゼファー MkIIのスタイリングを手掛けたのは、フォードに在籍していたコリン・ニール氏。ふくよかに膨らんだMkIから、全長は165mm、全幅は76mm拡大し、伸びやかでスマートな容姿に仕上げられた。

フォードの技術者は構造の理解を深め、剛性を維持しつつ、不要なスチール材を削ることに成功。サイズを大きくしつつ、車重は50kg程度の増加に留めていた。また、ホイールベースの延長と、大きな燃料タンクを得たことで、前後の重量配分も改善していた。

フォード・ゼファー MkII ファーナム・エステート(1956〜1962年/英国仕様)
フォード・ゼファー MkII ファーナム・エステート(1956〜1962年/英国仕様)

MkIと同じく、前後に3名がけのベンチシートを備えながら、インテリアも一新。車内空間もゆとりを増した。英国フォード初となる、イグニッションキーでスターターモーターを回す仕組みも導入された。

ステーションワゴンのリアシートは、ボディから取り外しが可能。郊外でのピクニックでは、地面においてベンチにすることも可能だった。背もたれは折りたため、荷室容量を2倍に広げることもできた。

リアガラスはMkIと同様にサルーンからの流用で、テールゲートの横開きスタイルも継承。ウインドウを囲うクロームメッキ・トリム部分で塗り分けられる、ツートーン塗装が幅広く設定された。

またサルーンと異なり、ステーションワゴンのリアには高レートのサスペンション・スプリングと、ひと回り大きいタイヤを装備。上級モデルのゾディアック MkIIには、専用のホイールカバーとエンブレム、サイドミラーやフロントグリルなどが与えられた。

この続きは、フォード・ゼファー MkII ファーナム・エステート(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フォード・ゼファー MkII ファーナム・エステートの前後関係

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