さよなら「ゾエ」! ルノーのEV先駆者を振り返る 後継は「5」 楽しい走りで電費は優秀

公開 : 2024.04.23 19:05

最近の電動SUVより優秀な電費 モダンな車内環境

とはいえバックアップとして、内燃エンジンで走るクルマも1台あった方が安心。充電器の設置環境がわからない、遠くの目的地へ向かう場合も心配が減る。年間での出番は数回かもしれないが、維持費は節約したガソリン代でまかなえる。

そんなアーリーアダプターによる、進化途上のバッテリーEVとの付き合い方を、ゾエは一般化した。実際、セカンドカーとして家庭に普及していった。ところが、実際に所有してみると、ファーストカーとして活躍することも多かったはず。

ルノー・ゾエ  R110 ZE50(英国仕様)
ルノー・ゾエ R110 ZE50(英国仕様)

今回、筆者がしばらくお借りしたゾエは、最寄り駅やショッピングモールまで、元気に走ってくれた。家族や親戚を迎えに行き、送り届けた。少なくとも走行時は、ゼロエミッションで。

不用品を詰めた大量のダンボールを積んで、リサイクルショップにも行った。生活の一部といえた、自宅から100km弱離れた目的地までの往復にも、問題なく使えた。

生産終了間際のゾエは、装備がアップデートされていた。ヘッドライトはLEDで、オートワイパーにオートロックが標準。スマートフォンと連携する、インフォテインメント・システムも装備され、車内環境は至ってモダンだった。

電費は6.4km/kWh。最近の電動SUVより、高効率なことも証明してみせた。

別れが寂しい 運転の楽しい小さなEV

そして、運転が楽しかった。乗り心地は柔らかく、適度に減衰力が効き、古き良きフランス車へ通じる味わい。ロータリー交差点を素早く回っても、大きくボディロールしたり、タイヤが鳴いてアンダーステアへ転じることはなかった。

最高出力は110psでも、最大トルクは22.9kg-mと太く、加速力は鋭い。MT車のようにクラッチペダルを踏んで減速する手間なく、AT車のようにキックダウンを待つことなく、アクセルオンでさっそうと加速する。滑らかで静か、高効率だ。

ルノー・ゾエ  R110 ZE50と、筆者のスティーブ・クロプリー
ルノー・ゾエ R110 ZE50と、筆者のスティーブ・クロプリー

価格の高い上級ブランドのクルマでも、実際に運転してみたら期待外れということは少なくない。生産終了を迎えても、なんとも思わないモデルも多い。しかしゾエは、お別れが寂しい。筆者の家族も、英国編集部の多くも、そう感じているようだ。

ゾエを返却する日、筆者の家族は玄関口で手を振って、別れを惜しんだ。自宅の前を出発し、少し進んだところで、悔やまれる気持ちになった。ルノーのCEOへ、本当にこの決断は正しかったのか聞いてみたいと考えた。

もちろん、それはナンセンスだ。もし問うなら、数年前であるべきだった。後継モデルの計画は、3年以上前に知られていた。もしかすると、ゾエの正当な2代目の計画も、存在したのかもしれない。筆者へ強く響く、小さなバッテリーEVだった。

ルノー・ゾエ R110 ZE50(英国仕様)のスペック

英国価格:−ポンド
全長:4087mm
全幅:1730mm
全高:1592mm
最高速度:135km/h
0-100km/h加速:11.4秒
航続距離:384km
電費:7.2km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1520kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:51.5kWh(実容量)
急速充電能力:−kW
最高出力:110ps
最大トルク:22.9kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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