斬新すぎて日本は207台だけ! ルノー・アヴァンタイム 欠品が維持の悩み UK版中古車ガイド(1)

公開 : 2024.03.16 17:45

斬新すぎて新車時は売れなかったアヴァンタイム モダンクラシックとなった今、個性派として注目度は上昇中 維持を難しくする部品の欠品 英国編集部が振り返る

巨大なフレームレス・サイドウインドウ

かつてのルノーは、今以上に勢いがあった。1980年代には、ミニバンのエスパスで市場を湧かせ、来る21世紀に向けて、ラグジュアリーなアヴァンタイムを投入。新カテゴリーの創出を狙った。

デザイナーは、フォード・シエラやルノー・トゥインゴなど、斬新なスタイリングを得意とするパトリック・ルケマン氏。新型エスパス用プラットフォームの上に、アルミニウム製のボディフレームを構築し、FRPのパネルで大胆なフォルムを創出した。

ルノー・アヴァンタイム(2001〜2003年/英国仕様)
ルノー・アヴァンタイム(2001〜2003年/英国仕様)

最大の特徴といえたのが、Bピラーのない巨大なフレームレス・サイドウインドウ。ドアを開くと、驚くほど広い開口部が出現する。ただし、極めてスタイリッシュではあるが、長く重いドアは構造的な負担が大きく密閉が難しい。

このドアの長さは、約1.4m。重さは片側だけで55kgあり、狭い場所での乗降性を考慮し、平行四辺形のヒンジが支えている。モノフォルムの頭上を彩る、サンルーフも巨大。新車当時は、量産車で最大の開口面積を誇った。

アヴァンタイムへ試乗したその頃のAUTOCARは、内容の方向性の乱れを指摘している。インテリアや乗り心地は快適志向でありながら、操縦性はスポーティ志向で、そのどちらも充分な水準には届いていなかったためだ。

ダッシュボードは未来的な見た目ながら、人間工学的な詰めが甘かった。シートは調整できる幅が狭く、リアシート側は空間に余裕がなかった。「大胆な考えですが、仕上がりは不完全。魅力の殆どは見た目にあります」。と、辛口に評価している。

魅力的なモダンクラシックとして再注目

欧州市場に用意されたエンジンは3種類。ベーシックなユニットが2.0L 4気筒ターボガソリンで、最高出力は164psと控えめ。最高速度は202km/hが主張された。

32.5kg-mと最大トルクに余裕があったのが、150psで2.2L 4気筒のターボディーゼル。6速MTを選択でき、最高速度は194km/hだった。

ルノー・アヴァンタイム(2001〜2003年/英国仕様)
ルノー・アヴァンタイム(2001〜2003年/英国仕様)

トップユニットが、3.0L V6自然吸気ガソリン。最高出力は213psで、最高速度は6速MTなら220km/h、5速ATでは215km/hがうたわれた。ちなみに、AUTOCARのテストでは5速ATで206km/hを確認している。

この3択は、動力性能では目立った違いがなく、どれを選ぶべきか購入希望者を悩ませた。結果的に英国では、ディーゼルターボは殆ど売れていない。

英国でのトリムグレードは、ベースグレードの他に、2.0Lガソリンターボのダイナミックと、3.0Lガソリンのプリビレッジという2段階。欧州市場には、エンジンの種類によってヘリオス、エクスプレッションも設定されていた。

アヴァンタイムの販売は当初から伸び悩み、2003年に生産終了。生産数は8557台と少なく、右ハンドル車は英国で445台、日本へ207台が届けられたに過ぎない。

20年が経過した今、ユニークなコンセプトと大胆なスタイリングに、希少性も相まって、魅力的なモダンクラシックとして注目度は上昇中。専用部品の入手が難しいことが、維持するうえでの課題となっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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