なぜ? “レトロモダン”な最新EV ルノー「20年使える形」の狙い 新型5 Eテック

公開 : 2024.02.29 06:25

ルノーの新型EV「5 Eテック」はレトロなデザインが注目を集めている。デザイナーは「20年は使えるデザイン」と自信を見せる。手頃な価格も実現し、今後のEV販売の中核となるだろう。

重要な意味を込めた「レトロ」デザイン

ルノーが2月26日に発表した新型量産EV「5 Eテック」は、レトロモダンなデザインを特徴とするが、これは単なる “懐かしさ” だけを狙ったのものではない。

デザイン責任者のローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏は、BMWミニやフィアット500、あるいはポルシェ911のような、長く愛されるアイコニックな外観を目指したと語る。

ルノー5 Eテック
ルノー5 Eテック    ルノー

同氏によると、レトロモダンなデザインは販売面で有利に働くが、フルモデルチェンジの際に課題が生じやすいという。しかし、5 Eテックのデザインは「20年はもつと考えています」と自信を見せる。

5 Eテックと同クラスにクリオ(日本名:ルーテシア)があり、こちらは時代とともにデザインを変えていくという。

新型車のデザインを決めるのはデザイナーだけではない。ルノー・グループのルカ・デ・メオCEOは、フィアット在籍時に500を復活させ、レトロデザインに熱心なことで知られる人物だ。

デ・メオCEOはブランド戦略の一環として、旧来の人気モデルを参照したデザインにより、ブランドの歴史とのつながりを感じさせることを重視している。ルノー着任後すぐに5 Eテックのデザインを承認したのも、こうした狙いがある。

今後数年間でルノーからレトロなEVが続々と登場するが、5 Eテックはその第1弾となる。同社の新経営計画「ルノーリューション(Renaulution)」の看板的なモデルであり、ブランドイメージや販売面でも非常に重要なポジションに置かれている。

主張しすぎない空力ボディ

5 Eテックは1970年代の初代ルノー5へのオマージュとして、全体的に硬質なエッジと柔らかい曲線を融合させている。

ヘッドライトは人間の瞳孔をイメージしており、キーフォブを持って車両に近づくと「ウインク」する。ボンネットには初代5の冷却ダクトを模した充電インジケーター(バッテリー残量計)が備わっている。

ルノー5 Eテック
ルノー5 Eテック    ルノー

リアエンドでは、ブラックのパネルに「Renault」の文字と新しい「5」のバッジが添えられている。

かつての5ターボを彷彿とさせるルーフマウントのリップスポイラーや、フラットな形状のアルミホイール、スラット付きのリアライトなどは空気の流れを整え、航続距離を合計20kmほど伸ばしているという。

部品共有で低コスト実現 小型・軽量化も

競争が激化する小型EV市場における武器の1つが「低価格」であり、欧州でのベース価格は2万5000ユーロ(約400万円)とされる。

プラットフォームは、主要構造の大部分をクリオや日産ジュークと共通化するアンペア・スモール(旧:CMF-BEV)を採用した。新たに専用プラットフォームを開発するよりも、開発コストを30%削減できたと言われている。

ルノー5 Eテック
ルノー5 Eテック    ルノー

モーターやバッテリーは、全長3.92m、全幅1.8mというコンパクトなボディサイズに合わせて小型・軽量化されている。

例えば、ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)バッテリーは、各セルを大きな四角いモジュールにまとめたシンプルなレイアウトを採用。40kWh容量では総重量240kg、52kWh容量では300kgを実現した。

そのため、40kWhバッテリーを搭載した5 Eテックのエントリーモデルの車両重量はわずか1372kgに抑えられている。ルノー初の量産EVであるゾエは、その約半分の容量(22kWh)でありながら、重量は100kg近く重い1468kgだった。

52kWhバッテリー搭載車の車両重量は1449kgで、ライバルのプジョーe-208と同等だ。

こうした軽量化の努力の結果、走行性能にも大きなメリットがあった。あるエンジニアが取材で語ったところによると、ルノーのサーキットでe-208をベンチマークとしてテスト走行を行ったところ、コーナリングスピードは5 Eテックの方が速かったという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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