名前変われど揺るがぬ「隠れ指標」の2ドアクーペ メルセデス・ベンツCLEクーペをテスト

公開 : 2024.04.20 11:05

・Eクラスクーペのリネームにより登場したCLEクーペに試乗
・ISG採用でより進化した上質さ
・単なるクーペに留まらない、CLEの価値とは?

EクラスクーペあらためCLEクーペとして船出

軽から普通車までハイト系ワンボックスばかりが売れ、ユーザーも最強と思っている日本市場。それゆえ、スポーツカーでもない2ドアのクーペという優雅なジャンルが伝統と格式あるハイエンドに欠かせない理由や、そもそも拠って立つところが理解されづらい。

多様性がパワーワードの時代に、それこそ嘆息すべき無知ですらある。

メルセデス・ベンツCLE200クーペ
メルセデス・ベンツCLE200クーペ

メルセデス・ベンツの新しいCLE200クーペ・スポーツを前にして、ふとタイムトリップ気味に考えた。ポール・ブラックがデザインしたあのW114の昔から、Eクラス相当のクーペが欠かさずラインナップされ世代をまた一新した事実に、感心して唸らざるをえない。

W114から数えたら最新のEクーペことCLEクーペ・スポーツはじつに8世代目にあたる老舗看板で、型式ネームは「C236」が与えられている。

ちなみに新型の6代目Eクラスは「W214」で、EクーペがCクラス・ベースとなった先々代のW204&C207の関係を思い出さないでもないが、MRAプラットフォームをS/E/C各クラスが採るようになって以来、各クラス・各シリーズの「格」を大きさで推し量ることは、ほとんど無意味とすらいえる。

一人乗りなら「ハイ、メルセデス」と呼びかけずとも音声コマンドが使える、ジャストトーク機能もEクラス同様、ちゃんと付いている。

装備はEクラスゆずり どこで差別化?

外観はメルセデスの掲げる「センシュアル・ピュリティ(官能的純粋さ)」のデザインランゲージ通り、滑らかでシンプルなグラフィックとボリューム感がみてとれる。

その中でもクォーターウインドウ後端の跳ね上げるようなキックラインが、先代よりもサイドビューを軽快に見せている。ショルダーのキャラクターラインも薄口でクリーンだ。

メルセデス・ベンツCLE200クーペ
メルセデス・ベンツCLE200クーペ

他にもフロントのスターライトグリルやマトリクスLEDランプ、ボンネット上に追加された一対のパワーバルジ、あるいはトランクリッド後端に控えめに設けられたリアスポイラー形状なども、クーペならではの特徴となる。荷室容量は420Lと、ゴルフバッグが2個は易々と収められる。

試乗車はレザーエクスクルーシブパッケージで、室内の仕立てやテーマはEクラスと共通する。ただし肩までサポートのある専用のシート形状や縦型11.9インチのセンターディスプレイゆえ、指数本分ほどだがパッセンジャー間の距離はより近い印象。

MBUXエンターテイメントパッケージプラスはなく、Eクラスに用意されていたセルフィ―用カメラやサードパーティアプリのインストールはできないそうだが「ビジネス寄りの機能」を省くことで、より親密なパーソナル空間というクーペらしいキャラは透けて見える。

この流れで唯一いただけないのはリアシートの左右を分ける、固い樹脂製のセンターコンソールだ。レザーストラップを引っ張って前席が電動スライドする乗降性のよさと大人ふたり分の最低限の居住性が確保されている分、惜しい。ともあれ、フロントシートの2人にプライオリティがある車であることは確かだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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