メルセデスAMG Cクラス 詳細データテスト 足りないナチュラルさ 動力性能のわりに洗練度は高い

公開 : 2024.08.10 20:25

走り ★★★★★★★☆☆☆

4気筒ハイブリッドを積む新型C63の初試乗は、ちょっと期待はずれ、などという程度では済まなかった。デジタル技術での加音はそれほど盛大ではなかったが、同時にこのクルマをほしいと思わせる理由にもならなかった。9速ATについても、やるべき仕事をこなしてくれる反面、C63のパフォーマンスを語る上で主要なキャラクターとはなっていなかった。

ローンチイベントの際、エンジニアたちはこのパワートレインを、パフォーマンスそのものでカリスマ性の欠如を補ったものだと語ったので、数字を見ていこう。今回のワゴンについて、0−100km/hの公称値は3.4秒と、M3ツーリングを0.2秒凌ぐ。それはみごとだが、もう少し差は大きいと期待していた。

公道をスポーティに走る程度なら、充電量は半分程度確保され、モーターアシストの恩恵を常に享受できる。サーキット走行するなら、カーボンセラミックブレーキをおすすめする。
公道をスポーティに走る程度なら、充電量は半分程度確保され、モーターアシストの恩恵を常に享受できる。サーキット走行するなら、カーボンセラミックブレーキをおすすめする。    MAX EDLESTON

リアルな話、各ギアでの加速には、途切れることのない勢いが常にある。スペックの項で紹介している計測データを見てもらえば、10秒以上の数字がないことがわかるだろう。9速でさえ、極端にハイギアではないので、ほかのクルマの限られたパワーバンドをあざわらうかのように、低回転から高回転まで引っ張ることができる。

発進加速は、M5CSのほうが、力強いV8ツインターボが本領を発揮すればやや速いが、C63は低回転から速さを発揮して、4速での48−113km/hで上回る。われわれはこれまで、4WDのM3やM4での動力テストを実施していないが、2021年に計測した後輪駆動のM4では同じようにはいかなかった。ギア固定での中間加速はトラクションに左右されるものではないので、駆動方式が原因とは言い難い。

とはいえ、公道に出ると、その各ギアでの圧倒的な速さは想像するほど意味を持たない。それを発揮するためには、キックダウンスイッチを押し込むほどスロットルペダルを踏み込まなければいけないからだ。なによりまず、それは不自然な感じがする。それに自動変速モードにしてあれば、低回転からの勢いが必要なら実際にキックダウンする。

ベストなのは、マニュアルモードを選んでおくこと。そうすれば、ギアボックスは勝手にシフトダウンせず、タイトなコーナーを、M3のブーストが十分に効かないうちに飛び出していく。

AMGは、バッテリーを使い果たすことは決してないと請け合うが、公道を走る限りどうやらそれは本当のようだ。少なくともパワートレインをスポーツモードにしておけば、フルパワーを使わない限り、システムは常にバッテリーを半分くらいまで充電してくれる。その間、電気モーターは威力を発揮できる。

メルセデスの電動車はブレーキのペダルフィールが一定しないこともあるが、このC63にその兆候は見られなかった。113km/hからの制動距離は43.6mと、なかなか優秀だ。しかしながら、標準仕様のスティールコンポジットブレーキは、高速からの減速を繰り返すと悪影響が出るようで、性能テストの後に数百km走るとわずかながらジャダーが感じられた。この2.2tのクルマでサーキットを走るつもりがあるなら、高くてもカーボンセラミックブレーキには選ぶ価値がある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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