【今年秋から360人がお引越し】トヨタがウーブンシティのフェーズ1を竣工

公開 : 2025.01.23 07:05

トヨタがウーブンシティのフェーズ1の建築が完了したと発表しました。2020年のCESで構想を発表し、2021年には地鎮祭を執り行って建設を進めてきた同施設の現在を、長期にわたって取材し続けてきた森口将之がレポートします。

2026年以降にはビジターも実証実験に参加予定

年明け早々に米国ラスベガスで開催されるエレクトロニクスの展示会、CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)。トヨタは、2020年にこの場で構想を発表した、静岡県裾野市のToyota Woven City(以下ウーブンシティ)を取り上げた。壇上には5年前と同じように豊田章男氏が立ち、フェーズ1の竣工を発表した。

今後はまず、トヨタやウーブンシティの開発を行うウーブン・バイ・トヨタなどの関係者とその家族100名程度が、今年秋以降に住みはじめ、その後社外のインベンターズ(発明家)などに範囲を拡大。フェーズ1エリアでは最終的に約360名、全体では最終的に2,000名程度が住民になるという。

最終的には約2000名が住む場所となる。
最終的には約2000名が住む場所となる。    トヨタ

このうちインベンターズについては、ダイキン工業、ダイドードリンコ、日清食品、UCCグループ、増進会ホールディングス(Z会グループ)の5社が決定したことも伝えられた。

住民以外がビジターとして実証実験に参加することも可能になるようで、まず関係者から受け入れを開始し、2026年度以降は一般の人も参加予定としている。

5年前の構想発表の時に比べると、ニュースで取り上げるメディアは少なかったが、SNSではさまざまな書き込みが見られた。その中には、ウーブンシティの位置づけを誤って理解している人もいるようだ。

たとえばその名称から、ウーブンシティを都市や街だと理解して、住んでみたいと思った人がいるかもしれないが、上に書いた発表を見ればおわかりのように、一般人はビジターとしての参加に限られている。

自分が住む都市への展開を期待する人もいるだろうが、それも可能性としては低そうだ。こちらも発表にあるとおりで、『モビリティのテストコース』だからである。

裾野市長選に大きく影響

たしかに5年前のニュースリリースを見返すと、トヨタはウーブンシティを実証都市と位置付けていて、『ヒト中心の街』、『実証実験の街』、『未完成の街』という言葉が並んでいた。

当時は、グーグル系企業『サイドウォーク・ラボ』がカナダのトロントで進めていた都市開発プロジェクトに、住民から収集したデータの扱いなどをめぐって反対の声が相次いでいた。その後、サイドウォーク・ラボは、撤退に追い込まれてしまう。

トヨタはここを、『モビリティのテストコース』だという。
トヨタはここを、『モビリティのテストコース』だという。    トヨタ

もちろんトヨタは、この課題についての対策は当初から織り込んでいた。トヨタ自動車東日本東富士工場の敷地を、私有地のまま開発する方針だったからだ。

しかしこれをまちづくりと捉える人は少なくなかった。地元の裾野市にも、そういう気持ちの人が多かったようだ。それが表面化したのが、翌年10月に市の主催で住民や報道関係者向けに行われた『これからのまちづくり』説明会だった。

同市ではウーブンシティの構想が発表された直後、次世代型都市構想であるSDCC(裾野デジタルクリエイティブシティ)構想を発表し、ウーブンシティの周辺整備もしていくとしていた。この時点ではワークショップも始まっていた。

だからだろう、説明会に参加した住民からは、もっとオープンに情報公開してほしいなどの意見が出された。

これに対して豊田氏は翌日、ウーブンシティは自己資金で開発したテストコースであり、公表できる話とできない話があることを理解してほしいとメッセージを出した。

すると3ヵ月後の2022年1月に行われた裾野市長選挙で、3期目を目指した現職が敗れ、財政改革を掲げた新人の村田悠(はるかぜ)氏が初当選。同年9月には、SDCC構想の終了が発表された。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

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