【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#30 夢の竜宮城は生きていた!

公開 : 2026.03.20 12:05

自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第30回は『夢の竜宮城は生きていた!』を語ります。

サンタナはデイトナ級の貴族だ!

不人気車マニアの遠藤イヅル氏と私とによる、お互いの不人気車の交換試乗も、いよいよクライマックス。私は37年ぶりに、日産フォルクスワーゲン)サンタナに試乗させていただくのである!

運転席をのぞき込むと、そこにはまんま故郷の風景があった。まるで冬眠していたかのようにそのまんま! ダッシュボードもトリムもシートも、ほとんどヘタリがない!

遠藤イヅル氏(右)の日産(フォルクスワーゲン)サンタナに筆者(右)が試乗!
遠藤イヅル氏(右)の日産(フォルクスワーゲン)サンタナに筆者(右)が試乗!    山本佳吾

我が大貴族号(先代マセラティクアトロポルテ)のシートは、ワインレッドがドドメ色に変色し、内装の樹脂はベタベタに劣化していたが、このサンタナはまるで違う! どうなってんの!?

遠藤氏「このクルマ、農家の納屋みたいなところにずっと保管されていた、いわゆる納屋物件なんです。買った時は、距離も3万キロ弱でした」

清水「そっ、そうだったんですか!」

納屋物件というと、岐阜の納屋に40年間眠っていたフェラーリ365GTB/4デイトナが思い浮かぶが、さすがサンタナはデイトナ級の貴族だ!

懐かしいキーをひねってエンジン始動する。直列5気筒は懐かしいサウンドとともに目覚めた。アイドリングでは奇数気筒らしいラフな振動が混じる。あー、この瞬間がサンタナだよね。

これぞアウトバーンの走りだ!

3速ATをDレンジに入れ、いよいよ発進だ。

オレ「おおーっ! パワステがガッチリ重いっ!」

 絵に描いたような古き良きドイツ車だ!
絵に描いたような古き良きドイツ車だ!    山本佳吾

遠藤氏「今のクルマに比べると重いですよね」

オレ「ボディもしっかりしてるっ! うおおおお!」

こ、こんなに質実剛健だったっけ!?  絵に描いたような古き良きドイツ車だ! 「今の軟弱なドイツ車は間違っとる!」と叫びたくなる。

アクセルを少し踏み込んで加速。サンタナは、路面の凹凸をものともせず、矢のように直進した(時速40キロくらいですが)。

オレ「うおおおお! これですよこれ! この直進安定性ですよ! ぜんぜん衰えてないっ!」

遠藤氏「そうなんですよ。高速ではホントにラクです」

若き日の私が、初代トヨタソアラの170馬力より感動した、サンタナの直進安定性。それは今でも生きていた! 現代のクルマと比較しても遜色なし! これぞアウトバーンの走りだ!

当時私は、速度無制限のドイツ・アウトバーンに激しく憧れていた。アウトバーンは、あの頃のクルマ好き青年にとって夢の竜宮城。サンタナは、その竜宮城から来た香りをプンプンさせていた。なにしろサブネームが”アウトバーン”だったくらいだし!

あれから40余年。今でも竜宮城は生きていた。目頭が熱い……。

記事に関わった人々

  • 執筆

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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